多目的コホート研究(JPHC Study)
2014/04/22 がんの診断と自殺および他の外因死との関連について
JPHC研究からの論文発表のお知らせ
多目的コホート(JPHC)研究から、がんの診断と自殺および他の外因死との関連について検討した研究の結果が発表されました。この研究により、がんになっていないグループに対する、がん診断から1年以内のグループにおける自殺および他の外因死のリスクはともに約20倍という結果が得られました。
この論文の状況は以下のとおりです。
Psycho-Oncology 2014年4月WEB先行公開
がん診断後1年以内の自殺および他の外因死のリスクが有意に高い
自殺に関連する要因として、精神疾患があることは良く知られていますが、身体疾患との関連についてはあまりよく分かっていません。また、他の外因死(不慮の事故など)についても、自殺と同様に様々な心理社会的要因との関連が示唆されています。そこで、本研究では、がんの診断がその後の自殺および他の外因死に及ぼすリスクについて検討しました。 多目的コホートの40~69歳の男女約13万人を研究開始(1990年または1993年)から2010年まで追跡した調査結果をもとに、がんの診断と自殺のリスクとの関連を検討しました。追跡期間中にがんの診断を受けたグループでは、その後1年以内に13人が自殺により、16人がその他の外因により亡くなりました。また、がんの診断から1年目以降の自殺は21人、外因死は32人でした。一方、がんになっていないグループでは527人が自殺により、707人がその他の外因により亡くなりました。 解析の結果、がんになっていないグループの自殺のリスクおよび他の外因死のリスクに比べ、がん診断を受けたグループの1年以内の自殺のリスクおよび他の外因死のリスクはともに約20倍でした。一方、診断後1年以上経過した自殺のリスクおよび他の外因死のリスクは、がんになっていないグループと違いがみられませんでした。
先行研究では、がんと診断されることに起因する心理的ストレスは診断後1ヶ月~数か月以内で最も強いことが指摘されています。また、診断後1年以内はがんの発生やその治療に伴うライフスタイルの変化なども大きい時期と思われます。さらには、がんおよびその治療による認知・身体的機能や社会的機能の低下が考えられます。これらの要因により、がん診断後1年以内の自殺および他の外因死のリスクが高かったと考えられます。
がん患者さんのケアに関わる医療従事者や家族など周囲の人々は、特にがん診断後1年以内においては、(1)自殺を含めた様々な外因死のリスクに留意する必要があること、(2)診断による心理的ストレス・抑うつ、がん罹患・治療による認知・身体・社会的機能の低下のアセスメントが重要であることを示唆するものと考えられます。
詳しくは、ホームページに掲載された概要版をご覧ください。