多目的コホート研究(JPHC Study)
2015/06/10 ヘモグロビンA1c (HbA1c)と心血管疾患リスクとの関連について
JPHC研究からの論文発表のお知らせ
多目的コホート(JPHC)研究から、HbA1cと心血管疾患リスクとの関連を検討した研究結果が発表されました。この研究により、HbA1cが高値群と低値群において心血管疾患リスクが高いことが示されました。
この論文の状況は以下の通りです。
Medicine (Baltimore) 2014年5月Web公開
HbA1cが高値群・低値群において心血管疾患リスクが高い
糖尿病は慢性的な高血糖を特徴とする病気で、糖尿病患者では心筋梗塞、脳梗塞などの心血管疾患の発症リスクが2~4倍高いことが報告されています。また、ヘモグロビンA1c(HbA1c)は1-2か月間の血糖値を反映する血液検査値として知られており、糖尿病の診断基準の一つとしても採用されています。そのため、HbA1cは心血管疾患リスクと関連することが予想されます。しかし、HbA1cと心血管疾患リスクとの関係は十分に明らかにされていないため、本研究ではHbA1cと心血管疾患リスクとの関連を調べました。
多目的コホート研究で1998~2000年度および2003~2005年度に実施した糖尿病調査に参加した29,059人(男性10,980人、女性18,079人)を対象としてHbA1cと心血管疾患発症との関係を検討しました。
本研究の追跡期間中に、935件の心血管疾患が発生していました。解析の結果、HbA1c 5.0~5.4%を基準とすると、5%未満、5.5~5.9%、6.0~6.4%、6.5%以上、および既知の糖尿病の5群の心血管疾患リスクは、それぞれ1.50、1.01、1.04、1.77、1.81であり、HbA1cが高い群だけでなく、低い群においても心血管疾患リスク上昇と関連していました。
心血管疾患を虚血性心疾患、脳梗塞、脳出血に分けて分析すると、虚血性心疾患はHbA1cが高いほどリスクが高くなるのに対して、脳梗塞や脳出血ではHbA1cが低い群と高い群においてリスクが高くなっていました。
HbA1cが低いと心血管疾患リスクが高いことは、2014年に発表された大規模プール解析でも報告されています。血糖値が低いことで心血管疾患リスクが上昇しているとは考えにくく、現時点でメカニズムは明らかでありません。HbA1cは赤血球の寿命が短縮したり、若い赤血球が血液中に増加したりすると、見かけ上低めに測定されることが知られています。そのため、何らかの原因で、HbA1cが見かけ上低く測定されているために、低HbA1cの群では心血管疾患リスクが上昇しているものと考えられます。
詳しくは、ホームページに掲載された概要版をご覧ください。