多目的コホート研究(JPHC Study)
2004/12/24 飲酒とがんリスクについて
多目的コホート(JPHC)研究から、飲酒とがん全体の発生リスクについて検討した論文が発表されました。( 「ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・キャンサー」2004年12月14日WEB先行公開 )
研究対象者をお酒の量によって6つのグループに分け、がんの発生率を比べました。その結果、お酒の量が最も多い1日あたり日本酒にして3合以上のグループでは、お酒を飲む中では量が最も少ない時々飲むグループの1.6倍になりました。
なお、研究ではお酒に含まれるアルコールの量によるリスクが検討されるため、種類による差はありません。日本酒1合と同じアルコール量(23g)になるのは、焼酎0.6合、泡盛0.5合、ビール大ビン1本、ワイングラス2杯(240ml)、ウイスキーダブル1杯です。
お酒とがんの関係
多目的コホート研究から、これまでに飲酒と死亡、がんによる死亡、胃がんリスク、大腸がんリスクなどについて発表してきました。今回は各部位を合計したがんリスクについての報告です。
お酒については、大量飲酒でがんリスクが高くなることでは研究結果が一致していますが、少し飲むだけでリスクが上がるのかどうかという点では議論が続いています。
多目的コホート研究では、男性で1日あたりの量が2合までのグループでは、がんリスクが高くなることはありませんでした。しかし、それ以上になると、2合から3合のグループでは時々飲むグループの1.4倍、3合以上のグループでは1.6倍と、がんリスクがだんだん高くなりました。
もし1日2合以上の大量飲酒をする人がいなかったら、発生したがんのうち13%は予防できたはずという結果でした。
女性については、定期的に飲むという人が少なかったせいか、はっきりした結果が出ませんでした。
たばこを吸う男性で、お酒によるがんリスクが上昇
男性については、さらに、たばこを吸う人と吸わない人で別々に飲酒によるがんリスクを比べてみました。すると、たばこを吸う人ではお酒の量が多ければ多いほどがんリスクも高くなり、1日3合以上のグループでは時々飲むグループの2.3倍になりました。
一方、たばこを吸わない人では、食道がん、肝臓がんなどを含む飲酒と関連の強いがんではお酒の量が増えるにつれてリスクが高くなったものの、全がんの合計についてはお酒の量が増えてもリスクは変わりませんでした。
お酒によるがんリスクは、たばこによって助長されるようです。
研究を報告した井上真奈美・国立がん研究センター予防研究部室長の話
喫煙者で飲酒によるがんリスクが上昇するのは、お酒に含まれるエタノールをアセトアルデヒドに分解する酵素が、たばこの煙の中に含まれる発がん物質を同時に活性化してしまっていることも考えられます
今回の研究結果からは、がん予防のためには、1日あたり2合を越える大量飲酒を慎むほうが良いということになりますが、ほかの研究結果も総合して考えると、健康のためにはお酒は1日1合程度まで、としておくべきでしょう。
また、まったく飲まないグループに比べ時々飲むグループのがんリスクが少し低いようにもみえますが、決してお酒を飲まない人が少し飲めばがん予防になるということを示すものではありませんので、無理にお酒をすすめるようなことがあってはなりません。
詳しくは、ホームページに掲載された概要版をご覧ください。
また、詳細版はこちらからご覧いただけます。