多目的コホート研究(JPHC Study)
2004/11/29 喫煙および受動喫煙と乳がんリスクについて
多目的コホート(JPHC)研究から、喫煙および受動喫煙と乳がんリスクについて検討した論文が発表されました。( 「インターナショナル・ジャーナル・オブ・キャンサー」2004年11月11日WEB先行公開 )
その結果、たばこを吸うグループでは吸わないグループに比べて乳がんリスクが高く、受動喫煙でも乳がんリスクが上昇することが確認されました。ただし、たばこや受動喫煙で乳がんリスクが上昇するのは、閉経前の女性に限られました。
たばこと乳がんの関係
乳がんは欧米に多く日本に少ないがんでしたが、近年は増加傾向にあります。乳がんの多くは、エストロゲン依存性といって、女性ホルモンのエストロゲンがある場合に増殖します。そのため、体内のエストロゲンレベルが高い時期が長く続くと、乳がんリスクが上昇することがわかっています。早い初潮や遅い閉経、出産経験がないことなどが要因に数えられています。
たばこはエストロゲンとはいっけん関係がなさそうです。たばこが乳がんに直接影響するかどうかは、これまでも議論になっていました。そこで、多目的コホート研究では、本人の喫煙状況と、家庭や職場などでの受動喫煙の状況によって、女性の乳がんリスクがどう変わるのかを調べてみました。
閉経前の女性で、たばこによる乳がんリスク上昇
その結果、やはりたばこによって乳がんリスクが変わることがわかりました。女性のライフサイクルの中で、閉経前と閉経後では乳がんの発生のしかたが違うと考えられています。今回の研究では、たばこに関するアンケート調査を実施した時点で閉経前と閉経後に参加者を分けて、その後約10年の追跡期間をおいて、乳がんリスクを検討しました。すると、たばこの影響がみられたのは閉経前の女性に限られました。閉経前の女性では、たばこを吸ったことがあるグループの乳がんリスクは、吸ったことがないグループの約3.9倍になりました。
多目的コホート研究から、閉経前の女性では、たばこによって乳がんリスクが上昇することが示されました。
受動喫煙でも乳がんリスクは上昇
たばこを吸わない女性の受動喫煙による乳がんリスクを、閉経前と閉経後に分けて検討しました。すると、閉経前の女性では、家庭や職場などで受動喫煙を受けていた女性の乳がんリスクは、受けていなかった女性の2.6倍でした。
多目的コホート研究から、閉経前の女性では、本人はたばこを吸わなくても、周りの人がすっていれば、乳がんリスクが上昇することが示されました。
乳がん予防でも禁煙が大切
エストロゲンに関連する要因を、自分の努力で変えることは難しいでしょう。しかし、たばこを吸わないこと、たばこを遠ざけることは、自分の努力でできる乳がん予防です。この研究を報告した花岡知之・国立がん研究センター予防研究部室長によれば、たばこの煙に含まれる発がん物質と乳がんの関連を示すような実験結果も少なくありません。しかも、禁煙によって、他の多くの病気を同時に予防することができます。その上で、若い女性には乳がん予防というメリットが付け加わるのです。
詳しくは、ホームページに掲載された概要版をご覧ください。