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多目的コホート研究(JPHC Study)

マグネシウム摂取と糖尿病との関連について

-「多目的コホート研究(JPHC研究)」からの成果-

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古の9保健所(呼称は2009年現在)管内にお住まいだった方々のうち、ベースラインおよび研究開始から5年後に行った調査時に糖尿病やがん、循環器疾患になっていなかった40~69歳の男女約6万人を、5年間追跡した調査結果にもとづいて、マグネシウム摂取と糖尿病発症との関連を調べた結果を、専門誌で論文発表しましたので紹介します(European Journal of Clinical Nutrition 2010年64巻1244-1247頁)。

マグネシウムは、インスリンの働きを良くし糖の代謝を改善することが示唆されており、マグネシウム摂取により糖尿病のリスクが低くなることが欧米の研究で報告されています。しかし、日本を含むアジアで行なった研究は少なく、一致した結果は得られていません。そこで、マグネシウム摂取と糖尿病発症との関連について検討しました。

全体としては、糖尿病発症との関連なし

研究開始から5年後に行なったアンケート調査の結果を用いて、マグネシウムの摂取量により5つのグループに分類し、その後5年間の糖尿病発症(男性634人、女性480人)との関連を調べました。糖尿病の発症は、研究開始10年後に行った自記式調査で、上記追跡期間内に糖尿病と診断されたことがある場合としました。
その結果、男女ともにマグネシウム摂取と糖尿病発症との有意な関連はみられませんでしたが、男性において、マグネシウムの摂取が多くなるほど糖尿病発症のリスクが若干低くなる傾向がみられました(図1)。さらに、糖尿病発症のリスクが高い肥満群(BMI25kg/m²以上)において同様の解析を行いましたが、マグネシウム摂取と糖尿病発症との有意な関連は認めませんでした。

図1 マグネシウム摂取と糖尿病発症のリスク

今回の研究では、男性において、わずかではありますがマグネシウム摂取による糖尿病予防の可能性が示唆されますが、全体としてはマグネシウム摂取と糖尿病発症との関連は認めませんでした。
欧米の研究では、マグネシウム摂取により糖尿病のリスクが低くなることが報告されていますが、今回の研究を含むアジアの研究では一致した結果は得られていません。その理由として、日本を含むアジアは欧米に比べ肥満者の割合が少ないことや、日本人のマグネシウムの供給源は欧米人とは異なること(日本人のマグネシウムの主な供給源:穀類、野菜類、豆類;欧米人:乳製品、動物性食品)が考えられますが、この点についてはさらなる検討が必要です。

今回の研究では、全対象者に実施された食物摂取頻度アンケート調査から、各グループの摂取量(中央値)を算出すると、最も少ないグループは男女ともに213mg、最も多いグループは男性では348mg、女性では333mgでした。それらの値は、対象者の一部に実施されたより直接的な食事記録調査から算出された値と対比すると、男性では7~16%低く、女性では4~5%多く(コホートI)または低く(コホートII)見積もっています。
多目的コホート研究などで用いられる食物摂取頻度アンケート調査は、摂取量による相対的なグループ分けには適していますが、それだけで実際の摂取量を正確に推定するのは難しく、また年齢や時代・居住地域などが限定された対象集団の値を一般化することは適当とは言えませんので、ここに示した摂取量はあくまで参考値にすぎません。

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