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多目的コホート研究(JPHC Study)

禁煙予測要因に関する研究

―「多目的コホート研究(JPHC研究)」からの成果―

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)と平成12年(2000年)に、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部の4保健所(呼称2008年現在)管内にお住まいの40~59歳の喫煙者約9,524人を対象にアンケート調査を実施した結果にもとづいて、10年後の禁煙を予測する要因について調べた結果を論文発表しましたので紹介します。(Nicotine Tob Res, 2010年12巻 1050-1054ページ)

10年後の禁煙を予測する要因は何か

1981年に初めて受動喫煙と肺がんの関連が日本で示されて以来、日本における喫煙対策は徐々に進められてきました。その結果、1990年に男性53.1%、女性9.7%だった喫煙率は2008年には36.8%と9.1%と減少しました。しかしながら、日本においてどのような要因が禁煙を促しているのかに関する報告は限られています。
今回の研究では、1990年に行われたアンケート調査から、禁煙に関連すると考えられる要因を取り上げ、10年後調査時(2000年)の禁煙の関連を分析しました。すなわち、禁煙の予測要因として年齢群(40-49歳と50-59歳)、性別、婚姻状態、教育歴、職業(ブルーカラー、ホワイトカラー、無職)、一日の喫煙本数、喫煙開始年齢、職場での受動喫煙頻度、自覚的ストレス、運動頻度、飲酒頻度、肥満、ベースライン時における過去1年間の健康診断受診の有無、2000年時における過去10年間の処方薬摂取の有無、2000年時における既往疾患の有無と2000年時の禁煙との関連を検討しました。

高年齢、ホワイトカラー職業、喫煙本数が少ない、喫煙開始年齢が高い、検診受診経験あり、処方薬あり、既往疾病ありが主な禁煙予測要因であった

1990年から2000年の間に新たに禁煙した人の割合は24.9%でした。年齢、職業、一日の喫煙本数、喫煙開始年齢、健康診断受診の有無、処方薬摂取の有無、既往疾患の有無と禁煙の関連が認められました。

図.10年後禁煙と予測要因の関連

ホワイトカラー職に就く人はブルーカラー職に就く人に比べて、禁煙の割合が1.18倍という結果でした。これは1996年に職場の禁煙対策が始められ、室内の職場における禁煙・分煙が推進されたことが一因ではないかと考えられます。また、一日の喫煙本数が多いほど、また喫煙開始年齢若いほど禁煙しにくいということも確認されました。喫煙本数や喫煙開始年齢はニコチン依存度と関連があることが別の研究で確かめられており、ニコチン依存が高いほど禁煙しにくいことが改めて観察されました。
ベースライン時に過去1年間で健康診断受診した人はしなかった人と比べて1.21倍禁煙の割合が高いことが観察されました。また、年齢の高い群は低い群と比べて1.58倍禁煙の割合が高いことが観察されました。これらは、健康意識の高い人がより多く禁煙した結果ではないかと考えられます。また、処方箋薬・既往疾病のある人は、無い人に比べて禁煙の割合が高いことが観察されました。健康を害したことで健康への関心が高まり、その結果禁煙行動につながったのではないかと考えられます。

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