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多目的コホート研究(JPHC Study)

飲酒とがん死亡率との関係について:たばこの影響

-「多目的コホート研究(JPHC研究)」からの成果-

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、 日本人の生活習慣病予防に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)に行いましたアンケートにて、 生活習慣について回答して頂いた、40〜59歳の男性約2万人の方々を、10年間追跡した調査結果にもとづいて、飲 酒とがん死亡率との関係における、たばこの影響について調べた結果を、欧州「栄養とがん」国際会議(2001年6月 21日−24日,リヨン市)および、専門誌(IARC Scientific Publication 156号 2002年 165-168ページ)で発表しまし たので紹介します 。尚、飲酒と死亡率全体との関係については、7年間の追跡調査の結果を、既に、報告致しまし た。

喫煙とは無関係に、飲酒は食道がんや肝臓がんによる死亡率を高める

飲酒ががんの危険因子であることは、これまでに行われてきた国内外の研究で明らかにされてき ました。がんの中でも、口腔・喉頭・咽頭・食道など、飲んだお酒が最初に通過する部位のがんや、胃から体に吸収 されたアルコールを分解する働きをする肝臓に発生するがんなどが、飲酒が原因で出来やすくなると言われています 。これらのがんを、「飲酒関連がん」と呼びます。同時に、たばこを吸う人と吸わない人では、がんに対する飲酒の 影響に差があるのではないかと考えられてきました。今回の調査では、飲酒の程度により6つのグループに分けて、 喫煙の有無別にがん死亡率を比べてみました。
その結果、飲酒関連がんの死亡率は、お酒を時々飲む人(月に1~3日程度)と比べて、2日に1合程度以上の飲酒習慣がある人のほうが高くなりました。飲酒関連がんによって 亡くなられた方の数が多くはないので、はっきりとは言えませんが、飲酒量が増えるとより高くなる傾向にもあり ました。そして、この結果は、たばこを吸う人でも、吸わない人でも、変わりがありませんでした。(下図)。

図1.飲酒習慣と飲酒関連がん死亡率との関係

毎日4合程度飲む人の死亡率は、2合程度の人よりかえって低いという結果でしたが、お酒をた くさん飲めば死亡率が下がるわけではありません。おそらくこの結果は、2合程度のグループの中には、昔はもっと たくさん飲んでいたけれども2合程度に減らした人たちがかなり含まれていて、このグループの死亡率が高くなった せいだと思われます。

たばこを吸っている人では、飲酒は全てのがんの死亡率を高める

「飲酒関連がん」以外のがんでは、たばこを吸う人と吸わない人とで、結果が違っていました。 たばこを吸わない人では、飲酒量が増えても、これらのがんの死亡率は高くなりませんでした。ところが、たばこを 吸う人では、飲酒量が増えれば増えるほど、がん死亡率も高くなるという結果でした。ときどき飲む人と比べて、毎 日2合程度の人では2.7倍、毎日4合程度の人では3.6倍も、死亡率が高くなりました(下図)。

図2.飲酒習慣と飲酒関連がん以外のがん死亡率との関係

喫煙者でだけ、「飲酒関連がん」ではないはずのがんの死亡率が、飲酒により高くなるのはなぜ でしょうか? まだよく分かっていませんが、一つの可能性として、アルコールを分解する酵素が、たばこの煙に含 まれる発がん物質も、同時に活性化してしまっているのかもしれません。

飲まない人達の死亡率が高いのには、いろいろな可能性がある

今回の調査では、ときどき飲む人よりも、飲まない人の方が、がん死亡率が高くなっていました。 この結果は、ときどき飲むことががんの予防につながったためという可能性もあります。けれども、より可能性が高 いのは、お酒を飲まない人のグループの中に、昔は飲んでいたけれども健康を害して止めた人や、もともと身体が悪 くて飲めない人などが含まれているからだと思われます。

たばこを吸わなくても、飲みすぎにはご用心

たばこを吸わない人達の死亡率は、飲酒により高くはなりませんでした。しかしながら、「飲酒 関連がん」については、たばこを吸う人でも吸わない人でも、飲酒により死亡率が高くなるという結果でした。また、 お酒は飲みすぎると、高血圧やそれによる脳卒中、また、肝硬変やアルコール依存症などの他の多くの病気の原因に なります。飲む場合でも、一日平均で1合くらいまでにするように心がけましょう。

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