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多目的コホート研究(JPHC Study)

たばこ・お酒と胃がんの関連について

-「多目的コホート研究(JPHC研究)」からの成果-

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん、脳卒中、心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、 日本人の生活習慣病予防に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)には、岩手県二戸、秋田県横手、長 野県佐久、沖縄県石川という4地域にお住まいの、40-59才の男女約4万人の方々に、アンケートに回答していただき ました。その後10年間の追跡調査に基づいて、たばこ・お酒と胃がんの発生との関係を男性について調べた結果を、専 門誌で論文発表しましたので紹介します(International Journal of Cancer 2002年 101巻 560-566ページ)。

今回はこれまであまり研究されてこなかったがんの詳細部位(噴門部(上のほう)あるいは下のほう)、および組織型 (分化型あるいは未分化型)にも着目して検討しました。

たばこを吸う人は吸わない人に比べて2倍 胃がんになりやすい

たばこを吸わない人を基準とした場合、吸う人は2倍胃がんになりやすいことが分かりました。 とくに「分化型」の胃がん(全体の62%を占めていました)では吸う本数が増えると胃がんの発生率も段階的に増 す傾向があることも明らかになりました。もう1つのタイプ「未分化型」の胃がんとたばこは無関係でした。

分化型の胃がんは日本人男性の胃がんの主要なタイプですので、たばこは日本人の胃がんの 発生率をあげるものと考えていいでしょう。吸う本数が増えると発生率も増すことから、たばこそのものに害があ ると考えられます。

たばこと胃がんとの関係(男性)
吸わない人の発生率を1としたときの吸う人の発生率を一日あたりの喫煙本数で分けた場合

図1.胃全体のがん
図2.分化型の胃がん

お酒を飲むと2倍から3倍「噴門部」の胃がんになりやすい

胃全体のがんとお酒は関連がありませんでしたが、お酒を飲むと2倍から3倍噴門部(上のほう) の胃がん(全体の13%を占めていました)になりやすい傾向がうかがえました。お酒は口腔、喉頭、食道といった上部 消化管のがんを起こしやすいことはよく知られています。胃の中でも、もっとも上部に位置する噴門部がんに限っ ては発生率を上げるようです。

お酒と胃がんの関係(男性)
のむ日数が一週間に一日未満の人の発生率を1としたときの一週間に一日以上のむ人の発生率を一日あたりの飲酒量で分けた場合

図3.胃全体のがん
図4.噴門部のがん

胃がんの予防は生活習慣の改善から

一口に胃がんといっても、がんの占める位置や組織のタイプによって、たばこやお酒といった生活習慣の影響が異なるこ とが分かりました。今後これらの詳細情報を活用することによってこれまで胃全体への影響をみていたときにははっきりしなかったことが明らかになっていく可 能性があります。

日本ではかつてにくらべて胃がんは減ってきていますが、他の国と比べるといまだに多いがんです。ま た、近年胃がんが減ってきたことは生活習慣こそが胃がんの発生に大きく影響していることの表れと言えます。今後も私たちはこのコホート研究の中で胃がんと 生活習慣の検討を進めていき、どうすれば胃がんが予防できるのかを考えていきたいと思います。胃がんになりにくいとされる生活習慣は取り入れやすいところ から大いに取り入れて胃がんになりにくい体作りに励みましょう。

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