トップ >多目的コホート研究 >現在までの成果 >食生活パターンと胃がんとの関連について
リサーチニュース

JPHCに関するお問い合わせはこちら
 


 

多目的コホート研究のメールマガジン購読申込みはこちら

多目的コホート研究(JPHC Study)

食生活パターンと胃がんとの関連について

「多目的コホート研究(JPHC研究)」からの成果

私たちは、いろいろな生活習慣とがん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防に役立てるための「多目的コホート研究」を行っています。
平成2年(1990年)に,岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県石川の4地域にお住まいの、40〜59 歳の男女約4万人の方々に、食事や喫煙などの生活習慣に関するアンケート調査を実施しました。その後10年間の追跡調査にもとづいて、食生活のパターンと胃がんの発生率(リスク)との関係を調べた結果を、専門誌で論文発表しました(International Journal of Cancer 2004年110巻435−442ページ)。この前向き追跡研究によって、「伝統型」食生活のグループで胃がんのリスクが高くなり、「健康型」食生活で女性の胃がんのリスクが低くなることが示されました。

日本人の食生活パターンは、男女それぞれ三つに分けることができる

これまでは単独の食品や栄養素の発がん作用や発がん抑制作用に関する研究が多かったのですが、実際に食事をするとき、私たちの体内では、複数の栄養素によるさまざまな相互作用が生じ、単独栄養素の作用が強められたり打ち消されたりしていると考えられます。食生活パターンに着目することによって、食事という生活習慣を総合的に検討することができます。まず、44品目の食事摂取頻度を問うアンケート調査の結果から、男女それぞれの主要な食生活パターンとして「伝統型」、「健康型」、「欧米型」の3タイプを導き出すことができました。

図1.伝統型食生活パターンの特徴

3つの食生活パターンの構成を簡単にご紹介します。

まず、「伝統型」食生活パターンでは、図のように、塩蔵魚卵、漬物、魚の干物、味噌汁、米、魚介類などとの関連が強く、逆にパンやバターなどとの関連が弱くなっています。また男性では、「伝統型」はアルコール(特に日本酒)との関連が強いことがわかります。
次に、「健康型」食生活パターンについては、さまざまな種類の野菜、果物、海草、じゃがいも、ヨーグルト、きのこ、大豆製品、牛乳、卵などと強い関連がみられました。
最後に、「欧米型」食生活パターンでは、肉類との関連が特徴的でした。「欧米型」に関連の強い食品には、ベーコン、レバー、牛肉、豚肉、鶏肉、パン、バター、チーズ、マヨネーズ、ドレッシング、炭酸飲料、果汁、野菜ジュース、インスタント・ラーメン、コーヒー、紅茶などがありました。

日本人の伝統的な食生活で、胃がんのリスクが高くなる

10年の追跡期間中に、男性2万300人中285人、女性2万1812人中115人が胃がんになりました。男女それぞれについて、3つの食生活パターンに当てはまる度合いが「低い」から「高い」まで4段階にグループ分けし、グループ間で胃がんのリスクを比較しました。胃がん発生率に関連するほかの要因{年齢、肥満度、総カロリー、学歴、遺伝的要因、飲酒・喫煙(男性のみ)}の影響を考慮したうえで、食生活パターンの度合いが最も「低い」第一グループの胃がんのリスクを「1」とした場合に、第二から第四までの3グループの胃がんのリスクがどうなるかを算出すると、図のような結果になりました。

図2.食生活パターンと胃がん発生率の関連

まず、男女ともに、食生活パターンの「伝統型」の度合が高まるにつれ、胃がんのリスクがはっきりと高くなりました。男性では、第二グループで2.0、第三グループで2.5、第4グループで2.9倍と、次第に胃がんのリスクが上昇しました。女性でも、同様に1.7倍、1.3倍、2.4倍と、「伝統型」に近いグループで胃がんのリスクが高くなりました。2004年1月に、われわれのコホート研究で、塩分濃度の高い食品をよく食べるグループでは胃がんのリスクが高くなると報告していますが、「伝統型」食生活で胃がんのリスクが高くなるのは、やはり塩辛や漬物、塩蔵魚卵、味噌汁や漬物など高塩分食品が多いことが原因と考えられます。塩蔵食品による単独作用のほかに、塩分のとりすぎと別の食品との相互作用によって、胃がんのリスクが高められている可能性もあります。

次に、女性では、食生活パターンの「健康型」の度合が最も低いグループに比べ、ほかの3グループで胃がんのリスクが低くなりました。一方、男性の「健康型」食生活では差がみられませんでした。男女で異なる結果となったわけですが、「健康型」のうち女性グループの方で野菜と果物がたくさん食べられていて、胃がんのリスクを下げるビタミンCとカロテノイドの摂取量が多くなったこと、逆に男性グループの方では喫煙者の割合が多く、食生活パターンに胃がんのリスクを上げる漬物と干物がやや多めという特徴があったことの影響かもしれません。
「欧米型」の食事は、男女とも胃がんのリスクとの関連はみられませんでした。

胃がんのリスクを下げるには、「伝統型」食生活でよくみられる高塩分食品の割合を減らし、「健康型」食生活の野菜と果物が豊富なところを取り入れるように工夫すると良いでしょう。

詳細版はこちら >>

上に戻る