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多目的コホート研究(JPHC Study)

肥満度(BMI)とがん全体の発生率との関係について

-「多目的コホート研究(JPHC研究)」からの成果-

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん、脳卒中、心筋梗塞、糖尿病などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防に役立てるための研究を行っています。

平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県柏崎、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古の9保健所(呼称は2004年現在)管内にお住まいだった40〜69歳の男女約 9万人の方々にアンケート調査に回答していただきました。その後平成13年(2001年)まで追跡した調査結果に基づいて、肥満度(BMI)とがん全体の発生率との関係について調べた結果を、専門誌で論文発表しましたので、紹介します(Cancer Causes and Control 2004年15巻 671-680ページ)。

非常にやせていると、将来がんになりやすい

調査開始時の身長と体重から肥満度(BMI:体重(kg)÷[身長(m)]2)を算出し、それを7グループに分けて、その後のがん全体の発生率を比較してみました。調査開始から約10年間の追跡期間中に、調査対象者約9万人のうち約5千人が何らかのがんにかかりました。

男性では、BMIが21-29では、がん全体の発生率はほとんど同じでしたが、BMIが21未満のやせているグループと30以上の非常に太っているグループで発生率が高くなるU字型の傾向がみられました。特に、非常にやせているグループでのがん全体の発生率の増加は顕著で、BMIが19未満の最もやせているグループの発生率は、BMIが23-24.9のグループと比較して、約30%高くなっていました。よく、がんになった結果やせたのではないか、といわれますが、研究が始まって数年間以内にがんにかかった人を除いても、同じ結果だったので、もともと非常にやせているということで、将来がんになりやすいのではないかと考えられます。一方、女性では、太っていてもやせていても、その後のがん全体の発生率には特に違いがみられませんでした。

図1.肥満度とがん発生率との関係

がんの死亡率との関係を見た場合も同様で、やせているグループと太っているグループでがんの死亡率が増加するU 字型の傾向で、罹患率との関係よりもやせによる死亡率の増加がより顕著でした。以上のことから、日頃から非常にやせている人はそれほどやせていない人と比べてがんになりやすいと同時に、がんになった後の回復力も弱いのではないかと推察されます。

日本人は、欧米人と比較してBMIの分布が大きく違う

この研究と同じ中高年層の肥満度の分布を欧米人と比較してみると、BMIが30以上の肥満の人は、ヨーロッパで約15-20%、米国で約30%と報告されていますが、日本人では、この研究の対象者でも国民栄養調査結果でも共に2-3%となっており、わが国は、決して欧米のような肥満大国ではないことがわかります。一方、約20%はBMIが21未満のやせているグループに属しており、日本人の分布は欧米人と比較してやせている方にかたよっていることが明白です。このように、欧米人と日本人では、肥満度の分布が大変異なっており、欧米人では、割合の少ない「やせ」の人の影響が、日本人では「肥満」の人の影響が出にくいとも考えられます。

図2.肥満とがんとの関係

わが国においてBMIと病気との関係を考えるときには、やせに起因する影響の大きさを無視できません。今回の結果をふまえると、わが国のように欧米と比較して平均的にやせている国では、肥満だけでなくやせを予防することが、がんを防ぐために重要と考えられます。とかく肥満にばかり気をとられがちですが、同時にやせすぎにも十分注意しましょう。

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