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現在までの成果

生殖関連要因やホルモン剤使用と女性の肺がんとの関係について

-多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果-

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん、脳卒中、心筋梗塞、糖尿病などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防に役立てるための研究を行っています。 平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県柏崎、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古の9保健所(呼称は2004年現在)管内にお住まいの方々に、アンケート調査の回答をお願いしました。そのうち、40~69歳の喫煙していない女性約4万5千人について、その後8-12年間追跡した調査結果に基づいて、女性の生殖関連要因やホルモン剤使用と肺がんの発生率との関係について調べた結果を、専門誌で論文発表しましたので、紹介します(International Journal of Cancer 2005年117巻662-666ページ)。

喫煙以外の肺がんの危険要因

わが国では男女とも肺がんの発生率が増加しています。肺がんの最大の危険要因が「喫煙」であることはよく知られています。しかし、わが国の女性の大半は喫煙しておらず、喫煙していない人からも肺がんは発生しています。このため喫煙以外にも肺がんの危険要因が存在するのではないかと考えられています。そして、最近、女性の場合、喫煙以外にも生殖関連要因やホルモン剤使用が、肺がんの発生と関係があるのではないかと疑われていますが、まだよく解明されていません。この問題を解く手がかりを得るため、喫煙していない女性のみを対象として、女性の生殖関連要因やホルモン剤使用と肺がんの発生率との関係を調べてみました。 追跡期間中に、対象となった喫煙したことのない女性約4万5千人の中、153人の方が肺がんになりました。この方々について、初経、閉経などの生殖関連要因やホルモン剤使用と肺がんとの関連を検討しました。なお、ここでは、肺がんのリスクが高まることがわかっている年齢や受動喫煙の状況について、あらかじめ影響を考慮して分析しています。

初経から閉経までの期間が長い人で肺がんの発生率が高い

既に閉経した女性について検討したところ、初経が16歳以上で閉経が50歳以下の初経から閉経までの期間が短い人と比較して、初経が15歳以下だったり、閉経が51歳以上だったりと、初経から閉経までの期間が長くなると、肺がんの発生率が2倍以上高くなりました。この関係は、手術などで人工的に閉経した人を除き、自然に閉経した人のみに限ると、より強くなりました。

図1.喫煙していない女性における初経・閉経と肺がんの発生率との関連(閉経後女性の場合)

人工的に閉経しホルモン剤を使用した場合、肺がんの発生率が高くなる

さらに、ホルモン剤の使用と肺がん発生率との関係を検討したところ、自然閉経でホルモン剤を使用したことのない人と比較して、人工的に閉経しホルモン剤を使用したことのある人では肺がんの発生率が2倍以上高くなっていました。そして、肺がんのうち、女性に多く喫煙と関連の弱い「腺がん」という種類のがんに限ってみても、同じような結果でした。

図2.喫煙していない女性におけるホルモン剤使用と肺がんの発生率との関連(閉経後女性の場合)

今回おこなった研究の結果では、体の中で作られる内因性エストロゲンでも女性ホルモン剤のように外から取り込む外因性エストロゲンでも肺がんの発生率が高くなっていました。

女性ホルモンが肺がんの発生にかかわるメカニズム

女性ホルモンがどうして肺がんに関係するのかについてはまだよく分かっていませんが、エストロゲンは、肺のがん細胞の増殖を直接促進したり、肺がん細胞中にあるエストロゲン受容体に、エストロゲンがつくことによってがん化を促進したりすることにより、肺がんの発生にかかわると考えられています。エストロゲン受容体は男性より女性で、また男性の喫煙者に多い扁平上皮がんより女性に多い腺がんで発現が大きいといわれています。メカニズムについては、今後のさらなる解明が必要です。

肺がんの予防はやはり禁煙から

今回の結果は肺がんがどうしてできるのか、メカニズムを考えるための手がかりとして非常に重要な知見であり、今後のメカニズムの解明が期待されます。しかし、初経年齢や閉経年齢などは、予防という観点から考えると、自分の努力で今から変えることは困難です。現時点で肺がんの予防に最も有効なのは、「禁煙」であるのはいうまでもありません。たばこを現在吸っている人は1日も早く禁煙し、現在吸っていない人は、他人のたばこの煙を避けることが大切です。

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