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現在までの成果

生理・生殖要因と乳がん罹患の関連について

-「多目的コホート研究(JPHC研究)」からの成果-

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・虚血性心疾患・糖尿病などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の10保健所(呼称は2005年現在)管内にお住まいだった、40~69才の女性約5万5000人の方々を、平成14年(2002年)まで追跡した調査結果にもとづいて、生理・生殖に関連する要因と乳がん罹患率との関連を調べた結果を、専門誌で論文発表しましたので紹介します。
Eur J Cancer Prev. 2007年16巻116-123ページ

今回の研究では、研究開始時に行ったアンケート調査(初回調査)の結果を用いて、初潮年齢や出産回数などの生殖に関連する要因によるグループ分けを行いました。そして、その後約10年の追跡期間に発生した乳がんのリスクを、グループ間で比較しました。

対象となった合計55,537人の女性のうち、40%は初回調査時点に閉経前でした。追跡期間中に441人の乳がんを確認しました。

初潮・閉経年齢と乳がん

初潮が早いほど、また閉経が遅いほど、乳がんのリスクが高くなることが知られています。多目的コホート研究では、閉経前女性で、初潮年齢が遅くなるほど乳がんのリスクが低くなりました。初潮を迎えた年齢が14歳より前のグループに比べ、16歳以上のグループの乳がんリスクは約四分の1に抑えられていました。閉経後女性では関連がみられませんでした。

一方、自然に閉経を迎えた女性の閉経年齢については、48歳未満のグループに比べ、54歳以上のグループでは2.0倍高くなりました。

なお、これらの項目については、プロゲステロン受容体陰性乳がんでは関連がみられましたが、陽性乳がんでは関連がみられませんでした。また、エストロゲン受容体による違いはみられませんでした。

図1.初潮年齢と乳がんリスク
図2.閉経年齢と乳がんリスク

出産回数と乳がん

子どもを出産したことがない女性では、出産したことがある女性よりも乳がんリスクが高くなること、また、出産回数が多くなるほど乳がんリスクが低く抑えられることが知られています。多目的コホート研究では、出産したことがないグループの乳がんリスクは、出産したことがあるグループに比べ、閉経前女性で1.7倍、閉経後女性で2.2倍、全体では1.9倍高くなりました。

また、出産回数については、5回以上出産したグループの乳がんリスクは、1回出産したグループに比べ、閉経前・後とも約60%低く抑えられていました。

なお、これらの項目については、ホルモン受容体による違いは見られませんでした。

図3.出産経験と乳がんリスク
図4.出産回数と乳がんリスク

初産年齢と乳がん

初産年齢が高くなると、乳がんリスクが高くなることが知られています。多目的コホート研究では、閉経後女性で、初産年齢が高くなるほど乳がんリスクが高くなりました。初産の年齢が22歳より低いグループに比べ、30歳以上のグループの乳がんリスクは2.1倍高くなりました。閉経前女性では、関連がみられませんでした。

なお、初産年齢については、ホルモン受容体による違いは見られませんでした。

図5.初産年齢と乳がんリスク

 女性ホルモン剤の使用と母乳は、乳がんと関連なし

今回の研究では、女性ホルモン剤を避妊や月経困難、閉経期などに服用したことがあるグループとないグループで乳がんリスクを比べましたが、差はみられませんでした。
また、出産した方が母乳を与えたかどうかでも乳がんリスクを比べましたが、差はみられませんでした。

この研究について

これまで、欧米の研究から、初潮年齢、閉経年齢、出産に関連する諸要因と乳がんのリスクとの関連が示されていました。今回の研究で、欧米に比べ比較的乳がんリスクが低い日本人女性の間でも、同様のリスク要因がみられました。

例えば、欧米に比べ平均初潮年齢が遅い日本人女性の中でも、やはり初潮年齢が遅いグループで閉経前乳がんのリスクが低くなることが、今回の研究で示されました。日本でも欧米でも、平均初潮年齢の低年齢化が報告されています。その主な理由には、成長過程の栄養状態が良くなっていること、思春期の身長や体重が増していることなどが考えられます。

また、自然閉経の年齢が遅いこと、出産しないこと、出産回数が少ないことは、いずれも閉経後の乳がんリスクを高くする要因でした。一方、初産年齢が高齢になると閉経後乳がんリスクが高くなりましたが、閉経前乳がんとは関連がありませんでした。その理由はよくわかりません。

このようなリスク要因については、コントロールできるものではありませんが、日本で乳がんが増加傾向にある原因の一部となっているのかもしれません。生理・生殖要因について、乳がんリスクが高いグループに入る方に対しては、特に、乳がん検診の定期的な受診が勧められます。

40歳以上69歳までの女性を対象とするこの集団では、10年という追跡期間中に閉経を向かえた女性も多く、実際には閉経後乳がんであるのに閉経前乳がんとして扱っているケースがあると考えられます。さらに、ホルモン受容体別に乳がんリスクを見極めるには、規模や期間を拡大した研究を行う必要があります。

 

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