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多目的コホート研究(JPHC Study)

ビタミンC摂取と老人性白内障発症の関係について

-「多目的コホート研究(JPHC研究)」からの成果-

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん、脳卒中、心筋梗塞、糖尿病、白内障などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防に役立てる研究を行っています。

平成7年(1995年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県石川という4地域にお住まいの、45~64歳の男女約40,000人の方々に、食習慣などについてのアンケート調査に回答して頂きました。そのうち、ビタミンCに関する回答に不備がなく、「白内障と診断されたことがある」または「白内障の手術を受けた」と答えた方を除いた約35,000人を、今回の分析の対象としました。対象者をビタミンCの摂取量でグループ分けし、平成12年(2000年)に実施したアンケート調査における老人性白内障発症リスクを比較し、専門誌で論文発表しましたので紹介します。
Eur J Nutr. 2007年46巻118-124ページ

平成12年に実施した調査で、医師から老人性白内障と診断されたかどうか、また老人性白内障の手術を受けたかどうかについて回答していただきました。平成7年に白内障を発症していなかった対象者35,186人(男性16,415人、女性18,771人)のうち、5年後の平成12年の調査で、男性216人(1.32%)、女性551人(2.94%)が新たに白内障と診断され、また、男性110人(0.67%)、女性187人(1.00%)が白内障の手術を受けたと回答しました。これらの回答の妥当性を確認するために、対象者の一部に許可を得て過去の医療記録と照合したところ、白内障の診断については53名中49名(92.5%)で、また手術については25名中25名(100%)で、自己申告による回答と医療記録の一致が確認されました。

ビタミンCの摂取量が多いほど、老人性白内障と診断される率が低くなる

ビタミンCの摂取量を男女ともにそれぞれ均等に5つのグループに分けて、その後5年間の老人性白内障の発症(診断の自己申告)との関係を解析しました(図1)。図の縦軸は、老人性白内障のなりやすさを示しています。ビタミンCの摂取量が一番少ない人のグループを1として、それ以上摂取する人の群がどのくらい(何倍)、老人性白内障になりやすいかを示しています。

図1 ビタミンC摂取と老人性白内障の発症との関連

解析の結果、ビタミンCの摂取量が多くなるにつれて、発症リスクが低くなる傾向が見られました。ビタミンCの摂取量が最も多いグループの発症リスクは、最も少ないグループに比べ、男性で0.65倍、女性で0.59倍、つまり、男性では35%、女性では41%低くなっていました。

ビタミンCの摂取量が多いほど、老人性白内障の手術を受ける率も低くなる

さらに、老人性白内障の発症を、より確実にとらえた「手術を受けた」と答えた方に絞って調べました。それでもやはり、ビタミンCの摂取量が多くなるにつれて、リスクが低くなる傾向が見られました(図2)。ビタミンCの摂取量が最も多いグループの発症リスクは、最も少ないグループに比べ、男性で0.70倍、女性で0.64倍、つまり、男性では30%、女性では36%低くなっていました。

図2 ビタミンC摂取と老人性白内障による手術との関連

 欧米で報告されていたビタミンC摂取による老人性白内障の予防効果が、日本人においても改めて確認された

欧米では、ビタミンCなどの抗酸化栄養素の摂取と老人性白内障発症率との関係について調査した追跡研究が多数存在しており、食事からのビタミンC摂取により老人性白内障の発症率が低下することが報告されていました。また、血中のアスコルビン酸濃度が高い人で、低い人よりも白内障リスクが低いことが観察されています。しかしながら、サプリメントの使用を調べた前向き研究や、ビタミンC補給による無作為化比較試験では、必ずしも白内障予防効果が示されているわけではありません。

加齢による水晶体の混濁は、水晶体を構成する蛋白が酸化によるダメージを受けることが主な原因であると考えられています。食事から摂取されたビタミンCによって、眼組織のアスコルビン酸濃度が高くなり、加齢による水晶体のダメージを予防することが、実験で示されています。

これまでアジアの一般住民を対象に検討した大規模な追跡研究は行われていなかったため、日本人においてもビタミンC摂取による老人性白内障の予防効果があるのかどうか分かっていませんでした。今回、私たちが行った追跡研究の結果、日本人においても、食事からのビタミンCの摂取が老人性白内障の発症率を低下させる可能性があることが分かりました。

 

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