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多目的コホート研究(JPHC Study)

飲酒パターンと総死亡との関連について

-「多目的コホート研究(JPHC研究)」からの成果-

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん、脳卒中、心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防に役立てるための研究を行っています。

平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古の9保健所(呼称は2005年現在)管内にお住まいだった40から69歳の男性約4万2000人の方々を平成16年(2003年)まで追跡した調査結果にもとづいて、飲酒のパターンと総死亡との関連を調べた結果を、論文発表しましたので紹介します。
American Journal of Epidemiology 2007年165巻1039-1046ページ

この研究では、飲酒のパターン、特に週に三日以上お酒を飲まない「休肝日」があるかどうかと総死亡との関連を調べました。飲酒量については、摂取するアルコール飲料の種類・1週間の摂取頻度・1回の摂取量から、1週間あたりのエタノール摂取量を計算しました。1週間摂取量が同じ場合に、「休肝日」があるグループとほとんどないグループで、総死亡率を比較しました。

これまで、「休肝日」という概念から、飲酒のパターンと総死亡との関連について調べた研究は国際的にはありませんでした。「休肝日」という言葉は、わが国では広く知られていますが、諸外国ではそのような概念がなく、"liver holiday"という英語を用いて論文発表いたしました。

飲酒習慣がある男性の6割は「休肝日」なし

調査開始時のアンケートで、飲酒習慣がある男性のうち、週1日から4日飲酒すると回答した男性を「休肝日」があるグループ、週5日から毎日飲酒すると回答した男性を「休肝日」がないグループすると、飲酒習慣のある男性の6割が「休肝日なし」のグループでした。「休肝日」という言葉は、広く日本人の間に浸透していますが、実践している男性は意外に少ないことがわかりました。

「休肝日のない」男性の多量飲酒者では、総死亡率が高い

調査開始時のアンケートから、1週間の飲酒の程度(エタノール換算量)を、4つのグループに分けました。さらに、週1-2日飲む、週3-4日飲むグループを「休肝日あり」とし、週5日から毎日飲むグループを「休肝日なし」とし、それぞれのグループの死亡率を比較しました。追跡期間中に、3,900人が死亡しました。

1週間あたり300g(エタノール換算量)以上飲酒する男性多量飲酒者では、休肝日あり(週1-4日飲酒)のグループよりも、休肝日なし(週5日から毎日飲酒)のグループで、総死亡率が高いことがわかりました。

図1 飲酒パターンと総死亡率

 男性の多量飲酒者では、同じ飲酒量であれば、「休肝日のない」グループで総死亡リスクが高い

1週間あたりのエタノール摂取量が同じ男性多量飲酒者で、1週間あたりの摂取頻度別に総死亡リスクを比較しました。

1週間あたりエタノール換算量で300-449g飲酒する男性での総死亡リスクは、休肝日なし(週5日から毎日飲酒)のグループは、週1-2日飲酒するグループの1.5倍になりました。週300-449gエタノール摂取は、毎日飲んだ場合、1日2-3合に相当します。

また、1週間あたりエタノール換算量で450g以上飲酒する男性での総死亡リスクは、週1-2日飲酒のグループの1.8倍でした。週450gエタノール摂取は、毎日飲んだ場合、1日3合以上に相当します。

図2 男性多量飲酒者での休肝日の効果

「休肝日」さえあればたくさん飲んでよいわけではない

1週間あたりエタノール換算量で450g以上飲酒する男性を更に詳しく調べると、多量に飲酒すれば休肝日有無に関わらず、総死亡リスクは高いことがわかりました。休肝日さえあればたくさん飲んでよいわけではありません。

この研究を含む多くの研究結果から、1日平均2合以上の多量飲酒は死亡のリスクが高くなるという結果が出ています。休肝日をもうけつつ、お酒はやはり1日平均で1合から2合程度にするほうがよいでしょう。休肝日は飲酒量を減らすということからも重要です。

 

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