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多目的コホート研究(JPHC Study)

緑茶飲用と前立腺がんとの関連について

-「多目的コホート研究(JPHC研究)」からの成果-

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の10保健所(呼称は2007年現在)管内にお住まいだった、40~69歳の男性約5万人の方々を平成16年(2004年)まで追跡した調査結果にもとづいて、緑茶飲用と前立腺がん罹患率との関連を調べた結果を専門誌で論文発表しましたので紹介します。
Am J Epidemiol. 2008年167巻71-77ページ

緑茶をよく飲むグループで進行前立腺がんリスク低下

追跡期間中に404人が前立腺がんになりました。そのうち114人は前立腺を超えて広がっている進行性、271人は前立腺内にとどまる限局性の前立腺がんでした(19人はどちらか不明)。緑茶を1日1杯未満飲む人を基準として、緑茶を1日1-2杯、3-4杯、および5杯以上飲むグループで、前立腺がんのリスクが何倍になるかを調べました。

その結果、緑茶飲用と全ての前立腺がんには関連がありませんでしたが、前立腺内にとどまる限局がんと、前立腺を超えてひろがる進行がんに分けて、緑茶飲用によるリスクを比べたところ、緑茶飲用が多ければ多いほど、進行前立腺がんのリスクが低下するという結果がみられました。緑茶を1日5杯以上飲むグループでは、1日一杯未満飲むグループと比べると、リスクが約50%低下しました。一方、限局前立腺がんでは、緑茶飲用との関連はみられませんでした。

緑茶飲用と全前立腺がんリスク

緑茶飲用と病期別前立腺がんリスク

緑茶と前立腺がんとの関係

緑茶は、カテキンという物質を多く含んでいます。実験研究によると、カテキンはアポトーシスを誘導し、細胞の増殖をおさえることで、発がんを抑制することが報告されています。アポトーシスとは、細胞の遺伝子にプログラムされた一連のプロセスによる細胞死を指しますが、これは不要なまたは異常な細胞を取り除くために身体に本来備わっている仕組みです。がん細胞では、このアポトーシスがどこかで止まってしまうと考えられます。

また、カテキンは、前立腺がんの危険因子の候補の一つである男性ホルモンのテストステロンレベルを下げたり、アンドロゲンレセプターの転写をおさえたりすることで、前立腺がんのリスクを下げることが予想されています。転写というのは、遺伝情報の流れの中で、細胞でDNA(遺伝子)配列がRNAにコピーされるステップを指します。次のステップで、RNAによってタンパク質(この場合はアンドロゲンレセプター)が作られます。

今回の研究では、進行がんで特にリスクの低下が見られました。これは、緑茶中のカテキンが、腫瘍がひろがること(浸潤)を阻害し、転移のときに多く発現するmatrix metalloprotease 2 (MMP-2)という物質の発現(細胞で遺伝情報をもとにタンパク質が合成されること)を抑制することが、実験研究で報告されていることからも説明ができます。また、進行がんの方がアンドロゲンレセプターの発現が多いので、カテキンのテストステロンやアンドロゲンレセプターを抑制する効果が、進行がんでより強い、とも考えられます。

しかし、今回の研究では、進行前立腺がんの症例数が少なかったので、結果が偶然に得られた可能性も否定はできません。一方、緑茶の発がん抑制作用を考えると、限局がんでも緑茶の予防効果が期待されますが、今回の研究では、緑茶飲用と限局前立腺がんとの関連はみられませんでした。緑茶の効果が、限局がんと進行がんで異なることも考えられますが、健康意識が高く緑茶をたくさん飲む人が検診を受け、限局前立腺がんが発見されたため、緑茶による前立腺がんリスク低下の効果が見かけ上消えてしまった、という可能性も考えられます。

緑茶は前立腺がんを予防できるのか?

今回の研究からは、緑茶による進行前立腺がんの予防効果が期待されますが、緑茶と前立腺がんとの関連を確実と判断するには、まだまだ多くの研究が必要です。

 

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