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多目的コホート研究(JPHC Study)

清涼飲料水(ソフトドリンク)と糖尿病発症との関連について

-「多目的コホート研究(JPHC研究)」からの成果-

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・虚血性心疾患・糖尿病などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防に役立てるための研究を行っています。

この調査では、平成2年(1990年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、東京都葛飾の5保健所管内にお住まいの40~59歳の男女に、食習慣を含む生活習慣についてのアンケートに回答していただき、食事調査を実施しました。同じく、5年後、10年後にも生活習慣のアンケートを送付し、生活習慣について調査させていただきました。それらの方の内、初回調査時点で糖尿病や循環器病、がんなどの生活習慣病になっていなかった男女約3万人の方々を、約10年追跡しました。

この調査では清涼飲料水を「コーラや果汁飲料(果汁100%未満)」、「100%果汁ジュース」、「野菜ジュース」の3種類に分けて、どの程度の頻度で飲用しているか調査し、5年後、10年後の生活習慣アンケート内に設けた、糖尿病についての質問により糖尿病の発症を確認しました。われわれはその調査をもとに、清涼飲料水と糖尿病発症との関係を分析し、この調査結果を国際専門誌(Clinical Nutrition 2013年 32巻 300-8ページ)に発表しましたので紹介します。


女性では「コーラや果汁飲料(果汁100%未満)」の飲用量が多いほど糖尿病の発症リスクが高い

10年間の追跡調査を行った結果、5年間追跡できた30,861人の中で598人(男性366人、女性232人)が、10年間追跡できた27,585人の中で824人(男性484人、女性340人)が、糖尿病になったことを確認しました。食事調査の結果、清涼飲料水を「ほとんど飲まない」、「週に2回以下」、「週に3-4回」、「ほぼ毎日」の4区分に分け、5年間の糖尿病発症、10年間の糖尿病発症に分けて分析しました。その結果、5年間の糖尿病発症のみならず、10年間の糖尿病発症においても、女性で「コーラや果汁飲料(果汁100%未満)」の清涼飲料水の飲用量が多いほど、糖尿病の発症リスクが高いことを確認しました(図1、2)。


図1、2 清涼飲料水と10年後の糖尿病発症の関連(男性、女性)


また、女性の高卒以上、職業がブルーカラー(現業職等)、Body mass index(BMI)が25㎞/m2以上、閉経前の女性において、清涼飲料水の飲用量が多いほど糖尿病発症リスクが高いことがわかりました。しかし、女性における他職種やBMI25未満、閉経後、また男性については明らかな関連はみられませんでした。

図3 女性における学歴、職業、BMI、閉経別にみた清涼飲料水と糖尿病の関係

 

清涼飲料水が糖尿病の発症させる理由

清涼飲料水は食事に追加して余剰のエネルギーを摂取することになり、糖尿病の危険因子である肥満につながる可能性が考えられます。また、多量の清涼飲料水の摂取は、急激な血糖・インスリン濃度の上昇に寄与し、耐糖能異常、インスリン抵抗性にもつながります。清涼飲料水の甘味のために使用されているフルクトースの摂取は、インスリン抵抗性との関連が強い内臓脂肪量増加量との関連が報告されており、血中尿酸値を上昇させ、肥満や糖尿病を進展させる可能性があります。


男性で清涼飲料水と糖尿病の関係がみられなかった理由

欧米人の男性では、清涼飲料水の飲用量が多いほど糖尿病発症リスクが高いことが報告されていますが、今回の調査では、日本人男性において清涼飲料水と糖尿病の関係はみられませんでした。考えられる理由として、欧米人に比べ清涼飲料水の飲料量が少ないこと、また同じ日本人でも、男性は女性に比べ体格が大きいことから、清涼飲料水1杯分の影響が女性よりも小さく、関係が出にくかったのではと推察されます。

本研究では、欧米に比べ、その飲用量の少ない日本人女性においても、清涼飲料水の飲用量が多いと糖尿病発症リスクが高いことがわかりました。清涼飲料水は、食生活が欧米化・多様化したわが国をはじめとするアジア圏内において、その消費量が増加傾向にありますので、今後注意が必要な食習慣の一つです。

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