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現在までの成果

血中イソフラボン濃度と胃がん罹患との関連について

-多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告-


私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・虚血性心疾患・糖尿病などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の10保健所(呼称は2013年現在)管内にお住まいだった方々のうち、40~69才の男女約3万7千人の方々を、平成16年(2004年)まで追跡した調査結果にもとづいて、血中イソフラボン濃度と胃がん発生率との関連を調べた結果を、専門誌で論文発表しましたので紹介します。 (Journal of Nutrition 2013年 143巻 1293-8ページ

胃がんの罹患率は女性の方が男性の1/2-1/3程度と低いことから、エストロゲンの胃がんへの関与が推測されています。一方、イソフラボンは化学構造がエストロゲンと類似していることから、エストロゲン様に作用し胃がんの発生に影響を与える可能性が考えられています。

多目的コホート研究では、食事からのイソフラボン摂取量と胃がんの関連について、すでに検討をおこないましたが、イソフラボン摂取が胃がんの予防に大きな影響を与えているとはいえない結果となりました(Hara A, et al. Am J Clin Nutr. 2012)。しかしながら、イソフラボン摂取量では、イソフラボンの代謝や吸収の影響を考慮することができません。そこで、多目的コホートにおいて血中イソフラボン濃度と胃がんとの関連について検討いたしました。


保存血液を用いた、コホート内症例対照研究

多目的コホート研究の対象者約10万人のうち、研究開始時に健康診査等の機会(1990年から1995年まで)を利用して、男性約13500人、女性約23300人から研究目的で血液を提供していただきました。2004年末までの追跡期間中に発生した胃がんのうち、関連データが不足していない胃がん483人(男性324人、女性159人)の1例ずつに対し、胃がんにならなかった方から年齢・性別・居住地域・採血時の条件をマッチさせた1人を無作為に選んで対照グループに設定し、合計966人を今回の研究の分析対象としました。

保存血液を用いて血漿中イソフラボン(ゲニステインとダイゼイン)濃度を測定し、それぞれ値によって最も低いグループから最も高いグループまでの4つのグループに分け、胃がんリスクを比較しました。

胃がんリスクについては、把握できている他の要因(胃がんの家族歴、喫煙、飲酒、肥満指数、ヘリコパクター・ピロリ抗体、食塩・高塩分食摂取)の影響をできる限り取り除いて検討しました。


血中イソフラボン濃度と胃がんとの関連はみられず

 血中イソフラボン濃度と胃がんリスクとの関連

今回の研究では、男女ともに血中イソフラボン濃度と胃がんとの関連はみられませんでした。胃がんの部位別、組織型別に検討をおこなっても、全体と同様に関連は認められませんでした。


この研究について

今回の血中濃度に関する検討でも、前回報告したイソフラボン摂取と同じように、関連性はみとめられませんでした。異なる評価法で一致した関連性同様の結果が得みられたことに意義があるといえます。

韓国の小規模な集団からの結果では、イソフラボンの血中濃度と胃がんに関して予防的な結果が報告されていますが、今回の研究のように対象者も多く、部位別・組織型別に検討された研究は前例がありません。今後、他の大規模な集団から得られる結果を見ていく必要があります。

これまでの研究結果から、胃がんのリスク要因としては、ピロリ菌感染の他、塩分高摂取や野菜果物の低摂取、喫煙などの影響が大きいと考えられます。これらの要因についてまず生活習慣を見直して、胃がんになるのを予防すると同時に、胃がん検診を定期的に受診することにより、胃がんを早期に発見・治療することが重要です。

研究用にご提供いただいた血液を用いた研究の実施にあたっては、具体的な研究計画を国立がん研究センターの倫理審査委員会に提出し、人を対象とした医学研究における倫理的側面等について審査を受けてから開始します。今回の研究もこの手順を踏んだ後に実施いたしました。国立がん研究センターにおける研究倫理審査については、公式ホームページをご参照ください。

多目的コホート研究では、ホームページに保存血液を用いた研究計画のご案内を掲載しています。

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