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多目的コホート研究(JPHC Study)

食事のGIおよびGLと糖尿病発症のリスクとの関連について

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

私達は、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、東京都葛飾区、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の11保健所(呼称は2014年現在)管内にお住まいだった40~69歳の方々に対し、5年後の平成7年(1995)年と平成10年(1998年)には、詳しい食事調査を含む2回目のアンケートで、当時の生活習慣について回答していただきました。そのうち、1回目と2回目の調査時点で糖尿病、循環器疾患にもがんにもなっていなかった男性27,769人、女性36,864人を、2回目の調査時点から平均約5年間追跡しました。これらの調査結果にもとづいて、食事のGI(グリセミック指数)およびGL(グリセミック負荷)と糖尿病発症との関連を調べた結果を、専門誌で論文発表したので紹介します(Nutrition Journal 2013年 12巻 165)。


食事のGI(glycemic index)とは

食事全体の炭水化物の食後血糖値の上昇能を示す指標です。炭水化物の摂取量の多少ではなく、食事全体で摂取される炭水化物の質を表す指標です。血糖値を短時間で高い値に上昇させる食品が多くを占める食事をしているかどうかを示します。血糖を上げやすい炭水化物を含む食品には、白米、食パン、もち、じゃがいも等があります。極端な例でご説明しますと、非常に食の細い人であっても、白いご飯だけを食べているような場合には、食事のGIは高くなります。


食事のGL(glycemic load)とは

食事の中で摂取される炭水化物の質と量とを同時に示す指標です。例えば、血糖を緩やかに上昇させる食品が多くを占める食事内容であっても、摂取量が多ければ、食事のGLは高くなります。逆に、血糖を急激に上昇させる食品の摂取が多くを占める食生活の人であっても、摂取量が少ないと食事のGLは低くなります。

この研究の対象となった方の食事調査のデータに基づき、食事のGIおよびGLを算出しました。その後5年間の追跡期間中に、男性690人、女性500人が糖尿病になったと回答しました。解析の際には、糖尿病リスクに関わる次の要因が結果に影響しないように統計学的に調整しました:年齢、保健所、総カロリー摂取量、喫煙、糖尿病の家族歴、運動量、高血圧、BMI、アルコール、マグネシウム、カルシウム、食物繊維、コーヒー、職業。


食事のGLが高い女性は糖尿病のリスクが高い

その結果、女性では、食事のGLが高いグループにおいて、糖尿病発症のリスクが高いことが示唆されました。食事のGLが低い人から高い人まで順番に並べてから4つのグループに分けて検討したところ、食事のGLが最も低い群に比べて最も高い群の糖尿病発症のリスクは1.52倍(95%信頼区間1.13-2.04)であり、食事のGLが上昇すると糖尿病のリスクが上昇するという傾向も有意にみられました(図1)。

図1 食事のglycemic loadと糖尿病発症のリスク(女性)
 


脂肪摂取量の多い男性では、食事のGIが高いと糖尿病のリスクが高い

次に、男女それぞれを肥満指数、身体活動量、食物繊維摂取、総脂肪摂取の高低で2つのグループに分けて解析を行いました。すると、脂肪摂取量が多い男性において、食事のGIが高いと糖尿病のリスクが上昇するという傾向が有意にみられました(図2)。


 図2. 食事のglycemic indexと糖尿病発症のリスク(脂肪摂取量が多い男性)


脂肪摂取量の多い女性では、食事のGIが低いと糖尿病のリスクが低い

女性では脂肪摂取量の高い女性において、食事のGIが低いと糖尿病のリスクが低下していることが示唆されました(図3)。

図3 食事のglycemic index、脂肪摂取量と糖尿病のリスク(女性)
 


この研究について

女性では食事のGLと糖尿病のリスクとの間に関連が見られました。例えば白米や食パン、もち、じゃがいも等の血糖値を急速に上げる食品が食事の多くを占める人や、これらを多く食べる人では、糖尿病のリスクが高まることが考えられます。男性においては同じような結果はみられませんでした。しかしながら喫煙や飲酒など健康を害する要因を持つ人は男性に多く(解析では調整されていますが)、他の健康に良くない特質がこの研究では考慮されていない可能性もあり、関連が無いとは言えないと考えています。
男性では、食事のGIと糖尿病のリスクとの関連が、脂肪を多く摂取する人にだけ見られました。また女性で脂肪を多く取る人では、血糖の上昇が緩やかな炭水化物が多くを占める食事をすることで、糖尿病のリスクが下がることが示唆されました。メカニズムは明らかではありませんが、炭水化物と同時に摂取された脂肪が、ある程度の食事のGIでは、血糖の上昇を穏やかにしていることが考えられます。

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