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多目的コホート研究(JPHC Study)

喫煙、コーヒー、緑茶、カフェイン摂取と膀胱がん発生率との関係について

-「多目的コホート研究(JPHC研究)」からの成果-

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防に役立てるための研究を行っています。

平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の10保健所(呼称は2008年現在)管内にお住まいだった、40~69歳の男女約10万人の方々を平成17年(2005年)まで追跡した調査結果にもとづいて、喫煙、コーヒー、緑茶、カフェイン摂取量と膀胱がん罹患率との関連を調べた結果を専門誌で論文発表しましたので紹介します(Cancer Sci.2009 Feb;100(2):294-91)。

膀胱がんの確実なリスク要因は喫煙ですが、そのほかに、化学物質や食事を含めた生活習慣が関わっていると考えられています。なかでも、コーヒーの膀胱がんへの影響については、多くの研究で調べられています。国際がん研究基金(IARC)では、コーヒーはヒトに対する発がん物質である可能性がある(Group 2B)としています。また動物実験などで、コーヒーに含まれるカフェインが、膀胱がんの発がんに関連しているのではないかと報告されています。

今回の研究では、喫煙と膀胱がんとの関連、コーヒー、緑茶、その中に含まれているカフェイン摂取量と膀胱がんとの関連を調べました。

喫煙で膀胱がんのリスクが高くなる

平均12.6年の追跡期間中に、男性164人と女性42人が新たに膀胱がんと診断されました。分析の結果、今回の研究でも、喫煙は膀胱がんのリスクであることが確認されました。喫煙指数(箱数×年数)でみると、多くなるほどリスクが高くなり、40以上のグループでは吸わないグループの約2倍でした。一方、たばこをやめてからの年数でみると、10年以上のグループでは吸わないグループと同じくらいのリスクでした(図1)。

図1.喫煙と膀胱がん罹患との関連(男性)

 
非喫煙者でコーヒー、カフェイン摂取量が高いほどリスクが高くなる

コーヒーについては、男性で、1日1杯以上飲むグループの膀胱がんのリスクがほとんど飲まないグループに比べ約1.5倍と高い傾向にありましたが、統計学的に有意ではありませんでした。緑茶、カフェイン摂取量とは関連が見られませんでした。

ところで、コーヒー摂取量は、膀胱がんの確実なリスク要因である喫煙習慣とも関連しています。そこで、喫煙者と非喫煙者にわけた解析も行いました。その結果、非喫煙者(たばこをやめた人を含む)で、コーヒーを1日1杯以上飲むグループでほとんど飲まないグループの2.2倍、カフェインの摂取量で3つのグループに分けた場合に最も多いグループで最も少ないグループの約2倍、膀胱がんリスクが高くなっていました。緑茶については関連がありませんでした(図2)。

図2.コーヒー・緑茶・カフェイン摂取量と膀胱がん罹患との関連(男性)

 
なぜ、非喫煙者でコーヒーやカフェインはリスクなのか?

カフェインは、アポトーシスや細胞周期を乱すことで膀胱がんの発がんに関与すると考えられていますが、同じ量のコーヒーでも喫煙者の方がカフェインの消失が早いことや、非喫煙者の方が尿中のカフェイン量が多いことなどが報告されています。このことが、非喫煙者でコーヒー・カフェインの影響がよりはっきりとみられた原因と考えられます。緑茶では関連がみられませんでしたが、男性のカフェインは、緑茶よりもコーヒーからの摂取量が多かったためと考えられました(コーヒー53%、緑茶40%)。一方、女性では、コーヒーとの関連は見られませんでしたが、1日5杯以上の緑茶を摂取する人で、膀胱がんのリスクが2.3倍になりました。女性の症例数が少なかったために、結果が偶然に得られた可能性も考えられますが、女性のカフェインは、コーヒーよりも緑茶からの摂取量が多かったからかもしれません(コーヒー43%、緑茶46%)。

また、コーヒーに含まれるカフェイン以外の物質が膀胱がんリスクに関係している可能性もありますが、それについては今回の研究からは指摘することができません。

喫煙が膀胱がんのリスク要因

今回の研究では、非喫煙者におけるコーヒー、および、カフェインによるリスクの上昇がみとめられましたが、膀胱がんの症例の中で、非喫煙者およびたばこをやめて10年以上たっている人は、わずか24%でした。膀胱がんの予防には、まず、禁煙することが最も重要です。

 

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