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現在までの成果

イソフラボン摂取と肝がんとの関連について

-「多目的コホート研究(JPHC研究)」からの成果-

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防に役立てるための研究を行っています。平成5年(1993年)に、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の6保健所(呼称は2009年現在)管内にお住まいだった、40~69歳の男女約2万人を平成17年(2005年)まで追跡した調査結果にもとづいて、イソフラボン・大豆製品摂取量と肝がんとの関連を調べた結果を専門誌で論文発表しましたので紹介します(International Journal of Cancer 2009年124巻1644-1649ページ)。

今回の研究対象に該当した男女約2万人のうち、12年の追跡期間中、101人(男性69人、女性32人)が肝がんと診断されました。アンケートから計算されたイソフラボン・大豆製品摂取量によって、3つのグループに分けて、最も少ないグループに比べ、その他のグループで肝がんのリスクが何倍になるかを調べました。

イソフラボン摂取量が多いグループの女性の肝がんリスクは高い

その結果、男性では、イソフラボン・大豆摂取量と肝がんの発生リスクに関連はみられませんでしたが、女性では、イソフラボン摂取量の最も多いグループの肝がんリスクは、ゲニステインで約3倍、ダイゼインで約4倍でした。統計学的有意ではありませんでしたが、大豆製品も、約2倍にリスクがあがりました(図1)。

図1.イソフラボン・大豆製品摂取と肝がんリスク

 
なぜ、イソフラボンは女性の肝がんのリスクを上げるのか

肝がんの最大のリスク要因は、B型およびC型肝炎ウイルス感染です。肝炎ウイルス感染者の割合に男女差がほとんどないにもかかわらず、肝がんの発生率は女性の方が男性より少ないことから、女性ホルモン(エストロゲン)が肝がんに予防的に作用する可能性が考えられています。動物実験や疫学研究でも、その仮説が支持されています。

イソフラボンはその構造がエストロゲンに似ていますが、その働きはもともと体内に存在するエストロゲンの量によって異なり、臓器によってもさまざまです。肝がんの場合には、もともとエストロゲンレベルが低い男性ではエストロゲン作用を、逆にエストロゲンレベルが高い女性ではエストロゲンを妨げる作用(抗エストロゲン作用)をするのではないかと推測されます。

したがって、イソフラボンを多く摂取すると、女性では肝がんに予防的なエストロゲン作用が妨げられることで、リスクが高くなる可能性が考えられます。それでは、なぜ、男性ではイソフラボンがリスクに影響しなかったのでしょうか。その理由の一つには、男性ホルモン(テストステロン)の影響が考えられます。血中テストステロンが高いと肝がんリスクが高くなるという報告がありますので、男性では、イソフラボンのエストロゲン作用がテストステロンの作用には及ばなかったのかもしれません。

今回の研究では、B型・C型肝炎ウイルス感染も考慮することができました。肝炎ウイルス陽性者に限った解析も行いましたが、結果はほとんど変わりませんでした。

以上の結果から、肝炎ウイルスに感染している女性は、イソフラボン摂取を控えた方がよい可能性が示されました。ただし、今回の研究では症例数が少なかったため、結果が偶然である可能性もありますので、今後の研究での確認が必要です。

また、肝がんになった人の8割以上がB型またはC型肝炎ウイルス陽性者であることから、肝がん予防のためには、まず肝炎ウイルス感染の有無を知り、感染していた場合には治療をするなどの措置をとることが必要です。

イソフラボンの摂取量の推定値について

今回の研究で、対象者に実施された食物摂取頻度アンケート調査から、各グループの摂取量を算出すると、最も少ないグループは、男女とも、ゲニステイン12mg未満、ダイゼイン8mg未満、大豆製品38g未満でした(ゲニステイン約12mgは豆腐で40g・納豆で1/3パックに換算されます)。最も多いグループは、男性では、ゲニステイン20mg以上、ダイゼイン13mg以上、大豆製品65g以上、女性では、ゲニステイン20mg以上、ダイゼイン13mg以上、大豆製品63g以上となりました(ゲニステイン約20mgは豆腐で80g・納豆で2/3パックと換算されます)。

それらの値を、対象者の一部に実施されたより直接的な食事記録調査から算出された値と対比すると、ゲニステイン・ダイゼインは、男性で27%、女性で23%、大豆製品は、男性で35%、女性で33%ほど過小評価していました。

コホート研究などで用いられる食物摂取頻度アンケート調査は、摂取量による相対的なグループ分けには適しますが、それだけで実際の摂取量を正確に推定するのは難しく、また年齢や時代・居住地域などが限定された対象集団の値を一般化することは適当とは言えませんので、ここに示した摂取量はあくまで参考値にすぎません。

 

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