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多目的コホート研究(JPHC Study)

10年間のBMIの変化と肥満の発生率について

-「多目的コホート研究(JPHC研究)」からの成果-

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・虚血性心疾患・糖尿病などとの関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防に役立てるための研究を行っています。

今回私たちは、多目的コホート対象地域のうち岩手県二戸保健所・秋田県横手保健所・長野県佐久保健所・沖縄県石川保健所管内にお住まいであった方(コホートⅠ)のうち、平成2年(1990年)にアンケート調査にお答えいただい方で、5年後・10年後にもアンケートにご協力いただけた方、さらに茨城県水戸保健所・新潟県柏崎保健所・高知県中央東保健所・長崎県上五島保健所・沖縄県宮古保健所管内にお住まいであった方(コホートⅡ)のうち、平成5年(1993年)にアンケート調査にお答えいただいた方で、5年後・10年後にもアンケートにご協力いただけた方を対象として、10年間のBMI(体重(kg)/身長(m)2)の変化と肥満の発生を調べました。その結果を、専門誌で論文発表しましたのでご紹介いたします。 (International Journal of Obesity 2008年 32巻1861-1867ページ)

肥満は、糖尿病・高血圧・高脂血症のリスク要因となっており、厚生労働省は「健康日本21」で生活習慣の変容による肥満者の減少を目標の1つに掲げています。どの年齢層を対象として生活習慣病予防を行うことが効果的かを知るために、まず現状での肥満者の割合およびその推移を知ることが大切です。

そこで私たちは10年間の個人ごとのBMIの変化を調べ、肥満の新規発生率を性別・年齢・地域(沖縄とそれ以外に区分)別に解析しました。

対象者は、男性29,338人、女性35,757人の合計65,095人で、年齢は、コホートⅠは40-59歳(平成2年)、コホートⅡは40-69歳(平成5年)でした。

BMI25(kg/m2)以上は、40~54歳の男性では、沖縄は2人に1人、それ以外の地域では4人に1人。

平均BMIは、沖縄は24.2kg/m2~24.8kg/m2であり、日本の肥満基準であるBMI25kg/m2に近く、沖縄以外の地域に比べて男女共にかなり高いことがわかりました。ベースライン時の肥満者の頻度は、40~54歳の男性でみると沖縄では2人に1人と高く、沖縄以外の地域では4人に1人でした。

地域別平均BMI(ベースライン時)

 
年齢を5歳区分にして、平均BMIの5年後・10年後の推移を調べました。その結果、ベースライン時に40~49歳の人はその後の10年間でBMIが上昇しますが、50歳以上の人は反対にBMIが減少していくことがわかりました。

また、同じ年齢層の比較では、男性は最近の世代ほど平均BMIが高くなり、反対に女性では低くなる傾向がみられました。

10年間のBMIの変化(男性・女性)

 
新規肥満の発生

55~59歳の沖縄以外の地域の人を基準として、肥満発生のリスク(オッズ比)を求めました。その結果、若い世代ほどオッズ比が高いことがわかりました。

10年間の新規肥満発生のオッズ比(男性)

10年間の新規肥満発生のオッズ比(女性)

 
 
この研究について

今回の研究では、40代のグループでは加齢と共に、その後の10年間でBMIが増加し肥満に移行するリスクが高くなる一方、50代以降は減少する傾向があること、また、同じ年齢層の比較では、男性では最近の世代ほど平均BMIが高くなるのに対し、女性では低くなる傾向があることが示されました。今後、そうした肥満への推移が、その後の生活習慣病の発症にどのように関連するのかを、注意深く観察することが必要です。

 

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