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多目的コホート研究(JPHC Study)

体重変化と死亡率との関連について

-「多目的コホート研究(JPHC研究)」からの成果-

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防に役立てるための研究を行っています。岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、東京都葛飾区、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の11保健所(呼称は2009年現在)管内にお住まいだった方々のうち、循環器病にもがんにもなっていなかった40~69歳の男女約9万人を、2005年まで追跡しました。

研究開始時に実施した生活習慣についてのアンケート調査から、現在の身長と体重、さらに、20歳のときの体重(もしくは、20歳からの体重の変化)を尋ね、20歳からアンケート時点までに、①5 kg以上減少、②5 kg以上増加、そして③体重変化5 kg未満、に分類し、その後、約13年の追跡期間中の総死亡、がん、循環器疾患死亡率との関連を調べました。この研究結果を論文発表しましたので紹介します。
Journal of Epidemiology and Community Health 2009 年6月 63巻447-454ページ

これまでに欧米の研究からは、成人したときの体重からの増加はその後の死亡率と強く関連すること、また一方で、体重減少もまた死亡リスクを上昇させること等が報告されてきました。しかしながら、日本人において、20歳からの体重変化が将来の死亡率に対してどのように影響を与えるのか、これまではっきりした成績は示されていませんでした。

20歳から体重が5 kg以上減少した群において死亡率が増加

本研究の追跡調査中に、6,494人の死亡(うち、がん死亡2,888人、循環器疾患死亡1,011人)が確認されました。まず、前述したように20歳からの体重変化により3群に分類し、性年齢階級別の死因別死亡率を比べました(図)。どの年齢階級でみても、5 kg以上体重減少の群において総死亡率は高くなっていました。また、5 kg以上体重増加の群においては死亡率の上昇は認めませんでした。

図.性年齢階級別の20歳からの体重変化と死亡率

 
特に男性において、20歳から5 kg以上の体重減少で総死亡、がん、循環器疾患死亡リスクが増加

次に、20歳からの体重変化5 kg未満の群を基準とし、5 kg以上減少、5 kg以上増加の各群の死亡リスクを推計しました。その際、年齢、追跡開始時の体格(Body Mass Index)、喫煙状況、飲酒状況、運動習慣、慢性疾患(高血圧、糖尿病、肝臓病、腎臓病)既往歴の影響を考慮しました(表)。

表.20歳からの体重変化と死亡リスク

 
男性において、総死亡に対する5 kg以上減少した群のリスクは、不変群に比べて1.44倍(95%信頼区間1.32-1.56)まで上昇し、また、5 kg以上増加のリスクは0.89倍(95%信頼区間0.82-0.97)でした。がん、循環器疾患死亡に対しては、50歳代、60歳代の群において体重減少の死亡リスクが上昇し、また、40歳代では、がん、循環器疾患以外の死亡リスクが上昇しました。

女性での総死亡に対する5 kg以上減少した群のリスクは、不変群よりも1.33倍(95%信頼区間1.17-1.52)高くなりました。しかしながら、男性とは異なり、がん、循環器疾患死亡と体重減少との関連は明らかではありませんでした。

このような体重減少の死亡率への影響は、追跡開始から5年以内に死亡した人を分析から除いても同様の傾向を認めました。さらに、喫煙の有無や慢性疾患既往の有無によって層別化した分析を行ってもほぼ同様に認められました。

体重増加と総死亡との関連は薄い

20歳のときの体格により、肥満あり(BMI 25kg/m2以上)の群と肥満なしの群に分け、その後の体重変化と総死亡率との関連をみました。体重の変化は5 kg毎に詳細に区分しました。

その結果、男性では、20歳のときの肥満の有無にかかわらずその後の体重減少が死亡率のリスクを上昇させていました。また、男女とも体重が増加することの死亡リスクの増加は、ほとんど認めませんでした。

日本人の体格は欧米のそれと比較するとかなり小さく、欧米の研究のように20歳からの体重増加がその後の死亡率に影響を与えると言うことはほとんど認められませんでした。むしろ、体重減少は男女とも総死亡のリスクを上昇させ、さらに男性においては、がんと循環器疾患死亡リスクを上昇させるという結果になりました。

本研究は自然経過としての20歳からの体重の変動を観察したものであり、いわゆるダイエットによる体重減少が影響しているものではありません。体重が減少する原因としては、喫煙、肝臓病や糖尿病等の慢性疾患、栄養不良といった様々な健康問題が背景にあるものと考えられます。

いずれにしても、20歳のときの体重とその後の変化(特に、体重減少)は、健康管理をする上での重要な指標になることが示されました。

 

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