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現在までの成果

心理要因関連質問への無回答と自殺との関連

-「多目的コホート研究(JPHC研究)」からの成果-

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・虚血性心疾患・糖尿病などの病気や死亡との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸にに役立てるための研究を行っています。平成12年(2000年)と平成15-16年(2003-2004年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、東京都葛飾、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の11保健所(呼称は2015年現在)管内にお住まいだった方々のうち、50~79才の男女13万人の方々を、平成20年(2010年)まで追跡した調査結果にもとづいて、心理要因関連質問への無回答と自殺との関連を調べた結果を、専門誌で論文発表しましたので紹介します。 (European Journal of Public Health, 2015年25巻424-430

心理要因に関連する質問票は、ストレスやそれに対する対処行動、睡眠パターン、社会的支えや心身障害を理解するのに役立つ重要なツールです。一方、このような質問票項目には敏感に反応する人も多く、無回答の原因になりやすいのも事実です。このような心理要因関連項目に対する質問への無回答の状況が自殺にどう影響しているのかについて、検討した研究は非常に少なく、規模も小さいものにとどまっています。そのため、今回、一般の日本人を対象とした前向き研究である多目的コホート研究で検討してみました。

この研究では、多目的コホート研究の10年後調査への回答者と無回答者を合わせた131193人が研究対象者となりました。このうち、31754人は10年後調査に全く回答しませんでした。また、10年後調査回答者99439人のうち、53.9%はすべての心理要因関連質問項目に回答、42.8%は心理要因関連質問の一部に回答、3.3%は心理要因関連質問に全く回答していませんでした。 平均8.6年の追跡期間中に、358人が自殺によって死亡しました。 心理要因関連質問への回答の有無とその後の自殺との関連を調べました。

 

心理要因関連質問への無回答が自殺のリスクに影響(図)

 質問票無回答と自殺_概要版_図

 

その結果、心理要因関連質問すべてに無回答群、一部に無回答群の両方で、自殺のリスクが高くなる傾向がみられました。特に、対処行動に関する質問の一部に無回答の者の自殺リスクは1.36倍(95%信頼区間1.01-1.85)、睡眠質問すべてに無回答の者の自殺リスクは2.07倍(95%信頼区間1.03-4.16)と高くなっていました。

自殺の要因を検討するような研究では、心理要因関連質問を用いることが多いのですが、そもそも、このような心理要因関連質問に無回答の者は自殺のリスクが高いことが示唆されます。研究の際に、無回答者を解析から除外してしまうことが多いのですが、自殺をターゲットとするような研究では、無回答者をも考慮して研究をする必要があるというのが、本研究から得られた教訓です。

 本研究では、心理要因に関連する質問票に無回答群で、その後の自殺のリスク上昇が認められました。なぜそうなるのかを解明するとともに、今後さまざまな角度から自殺リスクの高いグループを正確にとらえ、効果的な自殺予防策に役立てる研究を進める必要があるでしょう。

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