トップ >多目的コホート研究 >現在までの成果 >緑茶摂取と全死亡・主要死因死亡との関連について
リサーチニュース

JPHCに関するお問い合わせはこちら
 


 

多目的コホート研究のメールマガジン購読申込みはこちら

多目的コホート研究(JPHC Study)

緑茶摂取と全死亡・主要死因死亡との関連について

-「多目的コホート研究(JPHC研究)」からの成果-

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防や健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、東京都葛飾区、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の11保健所管内にお住まいだった方々のうち、がんや循環器疾患になっていなかった40~69歳の男女約9万人を、平成23年(2011年)まで追跡した調査結果にもとづいて、緑茶の習慣的摂取と全死亡・主要死因死亡との関連を調べました。その研究結果を論文発表しましたので紹介します(Annals of Epidemiology 2015年25巻512-518ページ)。

緑茶は日本人が最も多く摂取する飲料の一つです。緑茶にはカフェインやカテキンなど、健康に良いとされる成分が含まれています。これまでに緑茶摂取と循環器疾患やがんによる死亡との関連についての研究は行われてきましたが、日本人の5大主要死因との関連についての研究はまだありません。そこで、緑茶摂取と全死亡リスクおよびがん、心疾患、脳血管疾患、呼吸器疾患及び外因死を含む主要死因死亡リスクとの関連を調べ、その効果を検討することを今回の研究の目的としました。

 

緑茶を習慣的に摂取する群において、男女の全死亡リスク及び心疾患、男性の脳血管疾患及び呼吸器疾患による死亡リスクが減少

研究開始時に緑茶を飲む頻度に関する質問への回答から、1日1杯未満、毎日1~2杯、毎日3~4杯、毎日5杯以上飲むという4つの群に分けて、その後の全死亡及びがん、心疾患、脳血管疾患、呼吸器疾患、外因による死亡との関連を分析しました。本研究の追跡調査中には、12,874人の死亡が確認されました。

緑茶を1日1杯未満飲む群を基準として比較した場合、1日1~2杯、1日3~4杯、1日5杯以上の群の危険度(95%信頼区間)は、それぞれ男性の全死亡で0.96 (0.89-1.03)、0.88 (0.82-0.95)、0.87 (0.81-0.94)、女性の全死亡で0.90(0.81-1.00)、0.87(0.79-0.96)、0.83(0.75-0.91)となっていました。男女とも、緑茶摂取量が増えるにつれ死亡リスクが低下する傾向がみられました(図1)。

 お茶なおし

  *性別、年齢、保健所地域、喫煙習慣、飲酒習慣、BMI,高血圧・糖尿病・潰瘍既往、運動習慣、コーヒー・中国茶・紅茶・炭酸飲料・ジュース摂取、総エネルギー摂取量、果物・野菜・魚・肉・乳製品・米飯・味噌汁摂取及びベースライン調査時の雇用の有無で調整。

 

 

死因別に調べたところ、がん死亡の危険度には有意な関連がみられませんでしたが、心疾患死亡、脳血管疾患死亡、呼吸器疾患死亡については、緑茶摂取による危険度の有意な低下がみられました。1日3~4杯、1日5杯以上摂取する群の心疾患死亡の危険度(95%信頼区間)は、1日1杯未満摂取する群に比べ男性でそれぞれ0.74(0.60-0.91)、0.87 (0.71-1.07)、女性で0.74(0.57-0.97)、0.63 (0.48-0.83)でした。男性で1日3~4杯、1日5杯以上摂取する群の脳血管疾患死亡の危険度(95%信頼区間)は、それぞれ0.71(0.56-0.90)、0.76(0.60-0.96)となっていました。さらに男性の呼吸器疾患死亡では、1日1杯未満の人に比べ、1日3~4杯、1日5杯以上緑茶を摂取する群の危険度(95%信頼区間)は、それぞれ0.72(0.55-0.95)、0.55(0.42-0.74)でした。男性では脳血管疾患と呼吸器疾患、女性では心疾患と外因死において、緑茶摂取量が増えるにつれ死亡リスクが低下する傾向がみられました(図2)。

 

 お茶図2

  *性別、年齢、保健所地域、喫煙習慣、飲酒習慣、BMI,高血圧・糖尿病・潰瘍既往、運動習慣、コーヒー・中国茶・紅茶・炭酸飲料・ジュース摂取、総エネルギー摂取量、果物・野菜・魚・肉・乳製品・米飯・味噌汁摂取及びベースライン調査時の雇用の有無で調整。

 

 

研究開始から5年以内の死亡例を除いた場合も検討しましたが、緑茶と死亡リスクとの間には同様の関連がみられました。外因死については、ベースラインから5年以内に死亡した人を除外した場合、女性で1日3~4杯、1日5杯以上緑茶を摂取する群の危険度(95%信頼区間)は、1日1杯未満摂取する群に比べ0.64(0.43-0.95)、0.65(0.43-0.97)と統計学的に有意に低くなっていました。

次に、カフェイン摂取と死亡について検討したところ、全死亡、心疾患、呼吸器疾患および外因死について男女ともに摂取量が増すと死亡リスクが下がるという傾向を認めました。また男性では脳血管疾患についても同じ傾向がみられました。

 

緑茶と死亡リスクはどう関係しているのか

なぜ緑茶摂取で死亡リスクの低下が見られるのでしょうか。第一に、緑茶に含まれるカテキンには血圧や体脂肪、脂質を調節する効果があるといわれている上、血糖値改善効果があるとされています。第二に、緑茶に含まれるカフェインが血管内皮の修復を促し、血管を健康に保つとされています。第三に、カフェインには気管支拡張作用があり、呼吸器機能の改善効果があるのではないかと言われています。これらの効果が、循環器疾患や呼吸器疾患死亡につながる危険因子の調整に寄与しているのかもしれません。本研究では、緑茶摂取と女性の外因死リスク低下との関連も限定的ながら示唆されました。これについては、緑茶に含まれるテアニンやカフェインが認知能力や注意力の改善に効果があるのではないかとされていますが、はっきりとした因果関係は分かっていません。

本研究ではがん死亡については有意な関連が見られませんでした。部位別に行われた先行研究では、緑茶摂取と女性の胃がんリスク低下との関連が示唆されていますが、全がん死亡では他の部位のがんも総合して分析を行ったため、有意差がなくなった可能性が考えられます。

この研究で用いた質問票では、缶及びペットボトル入り緑茶を含む緑茶全般の摂取頻度を尋ねており、緑茶の淹れ方などで分けてはいませんので、この点をご留意ください。

 

上に戻る