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現在までの成果

緑茶・コーヒー摂取と胆道がん罹患との関連について

 

-多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告-

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成7年(1995年)と平成10年(1998)年に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の10保健所管内にお住まいだった、45~74歳の男女約9万人を平成22年(2010年)まで追跡した調査結果にもとづいて、緑茶・コーヒー摂取と胆道がん罹患との関連を調べた結果を専門誌で論文発表しましたので紹介します(Cancer Science 2015年11月WEB先行公開)。

緑茶はカテキン、コーヒーはクロロゲン酸などの抗酸化物質を含むことから、がんを予防する可能性が考えられており、さまざまながんに対して予防効果に関する研究がおこなわれております。胆道がんに対しては、動物実験でカテキンの予防的効果が示唆されていますが、胆道がんは世界的に希少ながんであるため、ヒトにおける疫学研究は十分に行われておりません。過去に行われた疫学研究のうちのいくつかにおいては、お茶(緑茶以外のお茶も含む)及びコーヒーの予防効果が示唆されているものの、全体として一貫した結果が得られていませんでした。そこで、私たちは、本研究にて緑茶・コーヒーの胆道がんに対する予防効果を評価しました。

今回の研究対象に該当した男女約9万人のうち、約12.7年間の追跡期間中に284人で胆道がんが発生しました。研究開始時の質問票をもとに、緑茶及びコーヒーの摂取量によってグループ分けし、最も少ないグループと比較して、その他のグループで胆道がんが発生するリスクが何倍になるかを調べました。

 

緑茶を最も多く飲むグループで、胆道がんリスクの低下が示唆された

緑茶との関連に関しては、まずは1日当たりの緑茶総摂取量(煎茶と番茶・玄米茶摂取量の合計)の解析を行いました。120mLを1杯相当とし、1日1杯以下のグループに対して、2杯~3杯、4杯~6杯、7杯以上のグループを比較した結果、7杯以上飲むグループで、統計学的に有意なリスクの低下が認められました。この結果は、男女で分けて解析を行った場合、または胆道がんの部位別(胆嚢又は肝外胆管)に解析を行った場合においても、統計学的有意差はありませんでしたが、類似の傾向が認められました。

次に、緑茶の種類別(煎茶と番茶・玄米茶)に分けて解析を行ったところ、煎茶と番茶・玄米茶のいずれにおいても統計学的に有意なリスクの低下は認められませんでしたが、煎茶を飲む量が多くなるとリスクが下がる可能性が示唆されました。以上の解析にあたっては、性別、年齢、地域、BMI、喫煙、飲酒、胆石症の既往、糖尿病の既往、慢性肝炎・肝硬変の既往、身体活動量、総エネルギー摂取量、魚摂取量、赤身肉摂取量、野菜・果物摂取量、コーヒー摂取量のグループによる違いが結果に影響しないように配慮しました。

 

胆道がん緑化コーヒー図1

 

コーヒー摂取と胆道がんのリスクの間に関連は認めなかった

今回の研究では、コーヒーの摂取量(カップで飲むコーヒーと缶コーヒーの合計)と胆道がんのリスクについても解析を行いましたが、関連は認められませんでした。男女を分けて解析を行っても、同様の結果でした。

 

胆道がんお茶コーヒー図2

 

考えられるメカニズム

緑茶に豊富に含まれるカテキンは、胆道がんの主要なリスク因子である胆石の生成を抑制する可能性が示唆されています。緑茶を最も多く摂取するグループで今回認められたリスクの減少は、カテキンの抗酸化作用に加えて、胆石予防の効果によるものかもしれません。また、緑茶にはビタミンCや葉酸などのがん予防効果の可能性がある栄養素が豊富に含まれており、特に番茶と比較して煎茶に多く含まれていることから、これらの栄養素が予防効果の一部に貢献している可能性もあります。 コーヒーと胆道がんの関連については、研究が非常に限られています。いくつかのがんで、コーヒーの予防的効果が示唆されており、動物実験で抗酸化物質であるクロロゲン酸などがその効果に関与している可能性が示唆されていますが、胆道がんにおける役割は報告されていません。

 

この研究について

過去の疫学研究と比較して、本研究ではより幅広い摂取量範囲で緑茶の効果を評価しました。一方で、緑茶中に抽出されるカテキンなどの成分量は、同じ茶葉を使用していれた場合と茶葉を変えた場合で異なるため、緑茶を多く摂取するグループの緑茶成分量は緑茶摂取量に適切に反映されていない可能性があります。また、緑茶・コーヒー摂取量は観察期間開始時の情報のみで評価しているため、観察期間中の摂取量の変化は評価に反映されていません。

本研究は過去の研究と比較して最も大規模な研究ですが、それでも胆道がんは罹患率が低いがんであるため、統計学的な検出力は限られており、そのため今回得られた結果も偶然の可能性は否定できません。胆道がんとお茶(緑茶以外も含む)・コーヒーの関連については、過去の疫学研究も含めて一貫しない結果が報告されており、また研究の数自体もかぎられていることから、今回の結果を確認するためには今後のさらなる研究が必要です。

 

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