多目的コホート研究(JPHC Study)
味の好みと体重変化について
多目的コホート研究(JPHC Study)からの成果
私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・虚血性心疾患・糖尿病などとの関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防に役立てるための研究を行っています。
多目的コホート対象地域のうち岩手県二戸保健所・秋田県横手保健所・長野県佐久保健所・沖縄県石川保健所管内にお住まいであった方(コホートⅠ)のうち、平成2年(1990年)にアンケート調査にお答えいただい方で、10年後にもアンケートにご協力いただけた方を対象として、20歳からベースライン調査時までの体重増加、ベースライン調査時からその後の10年間の体重変化を味の好み別に調べました。その結果を、専門誌で論文発表しましたのでご紹介いたします。 (International Journal of Obesity, 2009年33巻1191-1197ページ)
肥満は、糖尿病・高血圧・脂質異常症や心血管病、ある種のがんのリスク要因となっており、厚生労働省は「健康日本21」で生活習慣の変容による肥満者の減少を目標の1つに掲げています。肥満は、食事(摂取エネルギー量)と運動(消費エネルギー量)のアンバランスにより起こりますが、人がどのような食物を選ぶかは、環境、好み、知識などの様々な要因によって決まるといわれています。これらの要因の中で、味の好みは比較的早期の段階に決定され、生涯にわたり影響を及ぼすと考えられます。そこで、私たちは20歳からベースライン調査時までの体重増加(5kg以上)、ベースライン調査時からその後の10年間の体重の変化を味の好み別に解析しました。
対象者は、男性13,443人、女性15,660人の合計29,103人で、年齢は、40-59歳(平成2年)でした。
20歳からベースライン調査時までの体重増加
こってり味、甘い味が"嫌い"と答えた人を基準として、"どちらでもない""好き"と答えた人の、20歳からベースライン調査時までの体重増加(5kg以上)のリスク(オッズ比)を求めました。その結果、こってり味が"好き"と答えた人は"嫌い"と答えた人に比べて男性では1.45倍、女性では1.28倍オッズ比が高いことがわかりました。また、"どちらでもない"と答えた人も男性では1.13倍、女性では1.11倍オッズ比が高くなっていました。甘い味でみると、男性では味の好み別でリスクが変わりませんでしたが、女性では"嫌い"と答えた人に比べて"好き"と答えた人は1.22倍オッズ比が高くなっていました。
ベースライン調査時からその後10年間の体重変化
こってり味、甘い味の回答別("嫌い""どちらでもない""好き")にベースライン調査時からその後の10年間の体重変化量を算出し、"嫌い"と答えた人を基準にその他の群を比較しました。こってり味では、有意差が認められませんでしたが、甘い味では、男女とも"好き""どちらでもない"と答えた人は"嫌い"と答えた人に比べて体重変化の有意な増加が認められました。
この研究について
今回の研究では、こってり味、甘い味の好みは男女ともに20歳からベースライン調査時までの体重増加と関係があることが明らかになりました。さらに、甘い味の好みは女性においてはベースライン時からその後の10年間においても体重増加に影響を及ぼすことが示されました。肥満対策は、味の好みも考慮し、20歳以前の早期から行うことの大切さが示唆されます。