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現在までの成果

食事のGIおよびGLと大腸がんリスクとの関連について

―「多目的コホート研究(JPHC研究)」からの成果報告 ―   

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、新潟県長岡、茨城県水戸、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の10保健所管内にお住まいだった方々のうち、平成7年(1995年)と平成10年(1998年)にアンケート調査に回答していただいた45〜74歳の男性34,560人、女性38,941人を平成24年(2012年)まで追跡した調査結果に基づいて、食事のGI(グリセミック指数)及びGL(グリセミック負荷)と大腸がんリスクとの関連を調べました。その研究結果を専門誌に論文発表しましたので紹介します(Cancer Causes & Control 2016公開)。

 

食事のGI(glycemic index)とは

食事全体の炭水化物の食後血糖値の上昇能を示す指標です。炭水化物の摂取量の多少ではなく、食事全体で摂取される炭水化物の質を表す指標です。血糖値を短時間で高い値に上昇させる食品が多くを占める食事をしているかどうかを示します。血糖を上げやすい炭水化物を含む食品には、白米、食パン、もち、じゃがいも等があります。極端な例でご説明しますと、非常に食の細い人であっても、白いご飯だけを食べているような場合では、食事のGIは高くなります。

 

食事のGL(glycemic load)とは

食事の中で摂取される炭水化物の質と量とを同時に示す指標です。例えば、血糖を緩やかに上昇させる食品が多くを占める食事内容であっても、摂取量が多ければ、食事のGLは高くなります。逆に、血糖を急激に上昇させる食品の摂取が多くを占める食生活の人であっても、摂取量が少ないと食事のGLは低くなります。

一般的に、炭水化物を摂取することで血糖値が上昇しますが、その上昇を防ぐためにインスリンが体内で分泌されます。これまでの研究でインスリンやインスリン様成長因子(IGF-1)が大腸がんのリスクに関係することが報告されていることから、GI、GLと大腸がんとの関係が注目されてきました。これまでの、主に欧米から報告された疫学研究においてGI及びGLと大腸がんリスクに関する検討がされてきましたが、まだはっきりとは分かっておらず、炭水化物の摂取量や種類の異なる日本人での検討が必要であると考えました。

この研究の対象となった方の食事調査のデータに基づき、食事のGIおよびGLを算出し、各対象者におけるGI/GL値のスコアに基づいて4つのグループ(Q1:最低群、Q4:最高群)に分類した上、その後の大腸がんリスクとの関連を調べました。平均して12.5年の追跡期間中に、1,468人(男性889人、女性579人)が大腸がんと診断されました。解析の際には、大腸がんリスクに関わる要因が結果に影響しないように統計学的に調整しました。

 

GI、GLともに大腸がんリスクとの関連はみられず

研究の結果、GI、GLともに大腸がんリスクとの関連はみられませんでした。部位別に関連をみたところ、近位結腸がんでは男性でGLが高いグループでリスクがやや低下する傾向が見られましたが、統計学的に有意ではありませんでした。女性でも、GIが高いグループで近位結腸がんのリスクがやや上昇する傾向がありましたが、統計学的な有意差は認められませんでした。

 

 

図1、図2ともに年齢、地域、アルコール、喫煙、BMI、運動量、糖尿病の既往、大腸がん検診の有無、閉経の有無、ホルモン剤服用の有無、総エネルギー摂取量、カルシウム、マグネシウム、ビタミンB6,ビタミンB12、葉酸、ビタミンD、n-3不飽和脂肪酸、食物繊維、赤肉摂取を調整。

 

この研究について

今回の研究は、日本人におけるGI、GLと大腸がんリスクとの関連を検討した、初めての大規模なコホート研究になります。一部の欧米での先行研究では、GI、GLと大腸がんとの関連があると報告されていますが、白米が主食の日本に対し、欧米ではGI、GLおよび炭水化物の摂取は、GI値の高いパンやじゃがいもからGI値の低いパスタまで、バラエティに富んでいることが影響した可能性があります。また、炭水化物はたんぱく質や脂質とあわせてインスリン分泌に影響し、がんの発生に寄与している可能性があり、炭水化物のみでは関連をはかりきれない可能性も考えられます。さらに、炭水化物が多く含まれる食品は発がんを抑制する物質を含むことがあり、これらの作用が拮抗したために関連がみられなかったとも考えられます。

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