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多目的コホート研究(JPHC Study)

1995~2009年までの脳卒中と虚血性心疾患の病型別発症割合の推移について

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・虚血性心疾患・糖尿病などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。本研究は多目的コホート研究の対象地域の各保健所管内在住のその当時平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古の9保健所(呼称は2014年現在)管内にお住まいだった40~69歳の約9万5千人の方々の協力をいただき、脳卒中[脳出血、クモ膜下出血、脳梗塞(ラクナ—脳梗塞、脳血栓、脳塞栓)]と虚血性心疾患(心筋梗塞、突然死)病型別の発症割合の長期的な推移を解析しました。解析は、多目的コホート研究開始時(1990-94年)から5年後(1995-2009)の15年間を5年経過ごとに3期間(1995-99年、2000-04年、2005-09年)に分け、年齢がいずれも55-74歳の方々について、脳卒中と虚血性心疾患の病型別発症割合について3期間での推移を検討しました。この研究結果を専門誌で論文発表しましたので紹介します。(Atherosclerosis. 2016 May;248:219-23.

これまでの研究では、日本人の脳卒中、虚血性心疾患の発症率や死亡率が低下していることが報告されますが、脳卒中と虚血性心疾患の長期的な病型別発症割合の推移についてのデータは限られていました。

 

 

脳出血、クモ膜下出血の発症割合が低下したが、脳梗塞の発症割合は増加した

2009年までの追跡調査中に、1995-99年、2000-04年、2005-09年の3期間で脳卒中はそれぞれ522人、656人、724人発症し、虚血性心疾患は179人、187人、211人発症しました。脳卒中[脳出血、クモ膜下出血、脳梗塞(ラクナ—脳梗塞、脳血栓、脳塞栓)]と虚血性心疾患(心筋梗塞、突然死)の年齢調整発症率を算出し、その発症割合について3期間での推移を検討しました。

脳卒中に占める脳出血の割合は男性では1995-99年に比べ、2000-04年、2005-09年と年数が経過するにつれて統計学的に有意な発症割合の低下を認めましたが、女性での発症割合は横ばいでした。脳梗塞は、男女共に年数が経過するにつれて統計学的に有意な発症割合の上昇を認めました。クモ膜下出血は、男女共に統計学的に有意ではありませんでしたが年数が経過するにつれて発症割合が低下しました(図1)。

 

 

脳血栓、脳塞栓の発症割合は増加したが、心筋梗塞や突然死の発症割合は横ばい

脳梗塞をさらに病型別に見た場合、男女とも脳梗塞に占める脳塞栓の割合は、年数が経過するにつれて統計学的に有意な発症割合の増加を認めました。脳血栓は、男女ともに統計学的に有意ではありませんでしたが年数が経過するにつれて発症割合が増加しましたが、ラクナ—脳梗塞の発症割合は横ばいでした(図2)。虚血性心疾患に占める心筋梗塞と突然死の発症割合は横ばいでした(図3)。

 

 

まとめ

1995-99年、2000-04年、2005-09年にかけて、男性の脳出血、男女ともくも膜下出血の発症割合の低下を認めました。男女とも脳梗塞、さらに脳梗塞に占める脳塞栓と脳血栓の発症割合の増加が見られました。脳出血の発症割合低下の理由としては、血圧レベルの低下と血清総コレステロールレベルの増加との関連が考えられます。くも膜下出血の発症割合の低下は、血圧レベルの低下と動脈瘤クリッピング術の普及によるものと考えられます。今後は具体的にどのような原因が発症割合に寄与したのかを詳細に検証する必要があると考えられます。

 

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