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多目的コホート研究(JPHC Study)

女性関連因子と胆嚢・胆管がんリスクとの関連について

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)と平成5年(1993)年に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の10保健所管内にお住まいだった、40~69歳の女性約5万6千人を平成22年(2010年)まで追跡した調査結果にもとづいて、女性関連要因と胆嚢がん及び胆管がん罹患との関連を調べた結果を専門誌で論文発表しましたので紹介します(Eur J Cancer Prev.2017 Jul;26(4):292-300)。

胆嚢がんは女性に多く、胆管がんは男性に多く罹患率に性差があることから、生理や出産歴など女性特有の何らか因子がこれらのがんと関連している可能性が考えられています。一方で、胆嚢がん・胆管がんは世界的にも少ないがんであるため、ヒトにおける疫学研究は十分に行われておりません。そこで、私たちは、研究開始時に行ったアンケート調査の結果を用いて、初潮年齢や出産回数などの女性関連要因によるグループ分けを行い、胆嚢がん・胆管がんに罹患するリスクとの関連を評価しました。 今回の研究対象に該当した女性約5万6千人のうち、2010年までの追跡期間中に115人の女性が胆嚢がんに、113人の女性が胆管がんに罹患しました。

 

生理周期が不規則または長い女性で、胆嚢がんのリスクが高い傾向

今回の研究では、生理周期が短い女性(28日以下)と比較して、生理周期が長い女性(29日以上)及び不規則な女性で胆嚢がんのリスクが高い傾向が認められました(図1)。この結果は、研究開始時の閉経状態別に分けても、閉経前女性と閉経後女性で同じ傾向でした。加えて、妊娠時の年齢が低い女性(22歳以下)と比較して、高い女性(27歳以上)で、胆嚢がんのリスクが高い傾向が認められました。 また、胆管がんでは関連のある因子を認めませんでした(図2)。

 

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この研究について

今回の研究から、生理周期が長い、又は不規則な女性、妊娠時の年齢が高かった女性で胆嚢がんのリスクが上昇する可能性が示唆されました。この結果を説明するメカニズムはよくわかっていませんが、生理周期の長さ及び規則性については、女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)の分泌量と関連しており、また過去の研究から胆嚢上皮におけるこれらの女性ホルモン受容体の発現も報告されていることから、女性ホルモンの分泌量が胆嚢がんの発生に関連しているのかもしれません。
本研究は過去の研究と比較して最も大規模な研究ですが、胆嚢がん・胆管がんは稀ながんであるため、罹患数が少なく今回得られた結果も偶然の可能性は否定できません。胆嚢がん・胆管がんと女性関連要因との関連については、過去の疫学研究も含めて一貫しない結果が報告されており、また研究の数自体も限られています。本研究は、生理周期と胆嚢がんの関連を評価した初めての疫学研究であることから、今後さらなる研究結果の蓄積が必要です。

 

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