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多目的コホート研究(JPHC Study)

喫煙と成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)発症との関連について

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関連を明らかにし、日本人の生活習慣予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成2年(1993年)に茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の6保健所管内にお住まいだった40-69歳の方々を対象に、生活習慣に関するアンケート調査に回答していただきました。そのうち、健康診断時に任意で提供していただいた血液にて、ヒトT細胞白血病ウィルス(HTLV-1)の抗体検査が陽性でありました約1,300人の方々を、2012年まで追跡した調査結果に基づいて、喫煙と成人T細胞白血病/リンパ腫(adult T-cell leukemia/lymphoma, ATLL)発症との関係を調べました。

本研究は、日本人におけるHTLV-1陽性者を大規模かつ長期に前向きに追跡した最初の報告であり、その結果を、専門誌で論文発表しましたので、ここに概要を紹介します(Cancer Causes & Control 2016年27巻1059-1066ページ)。

 

たばこを1日当たり20本吸うごとにATLLの発症リスクが約2倍になる

アンケートでは、男性の28%がたばこを吸わない、72%が吸うまたはやめたと、また、女性の98%が吸わない、2%が吸うまたはやめたと回答されていました。アンケート実施から2012年までの約20年間に25名の方がATLLを発症しました。年齢や飲酒の影響を考えて、たばこの影響を検討したところ、1日に吸うたばこの本数が20本増えるごとに、2.03倍、あるいは、喫煙指数(パックイヤー:たばこ1箱を20本として、1日当たりの喫煙箱数と喫煙年数を掛けあわせた値)が40パックイヤー増えるごとに2.39倍、ATLL発症リスクの上昇と関連していました。

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ATLL予防のために禁煙を

ATLLは、HTLV-1感染者のごく一部の人に発症しますが、発症すると非常に予後が悪いので、発症しないようにすることが重要です。ATLLの発症には生活習慣も関連している可能性が指摘されていましたが、明らかではありませんでした。今回の研究では、喫煙することがATLL発症リスクの上昇と関連していることが報告されました。HTLV-1に感染した人がATLLを発症するには、長期間をかけて最低でも5つ程度の遺伝子の異常が蓄積される必要があると考えられており、喫煙は遺伝子異常を誘発しますので、ATLLの発症に関連する遺伝子の異常を引き起こす可能性があります。

喫煙は、ATLLだけではなく、多くのがんのリスクであることがわかっています。禁煙は、比較的容易に実施できる予防法ですので、是非、実行しましょう。

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