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現在までの成果

コーヒー・緑茶摂取と脳腫瘍罹患との関連について

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の10保健所(呼称は2016年現在)管内にお住まいだった、40~69歳の約10万人の方々を平成24年(2012年)まで追跡した調査結果にもとづいて、コーヒーおよび緑茶摂取と脳腫瘍罹患との関連を調べた結果を専門誌で論文発表しましたので紹介します(International Journal of Cancer 2016年8月WEB先行公開)


脳腫瘍には多くの種類が存在し、そのうち、悪性腫瘍の代表格にあたるのが神経膠腫(グリオーマ)です。神経膠腫(グリオーマ)は治療が難しい悪性脳腫瘍の一つなので、予防因子をみつけることはとても重要です。コーヒーは抗酸化作用のあるカフェインやポリフェノールが多く含まれており、がん予防効果が報告されていますが、海外の疫学研究を複数まとめたメタアナリシスでは、コーヒーは脳腫瘍に予防的には作用しない、と報告しています。一方、緑茶にもカフェインやポリフェノールが含まれていますが、緑茶と脳腫瘍との関連は明らかにされておらず、緑茶を多く飲むアジアでの緑茶やコーヒーと脳腫瘍との関連もよくわかっていません。そこで、私たちは、日本人における、コーヒー・緑茶摂取と脳腫瘍との関連を調べました。

 

コーヒーを1日3杯以上飲むグループで脳腫瘍のリスクが低下

コーヒー・緑茶を飲む頻度で、週に4日以下、1日1-2杯、1日3杯以上飲む、の3つのグループに分け、脳腫瘍のリスクを比較しました。その結果、コーヒーを1日3杯以上飲むグループでリスクの低下がみられました。緑茶摂取と脳腫瘍との明らかな関連は見られませんでした。さらに、症例数が少ないことから統計学的有意ではありませんでしたが、グリオーマでもコーヒーリスクの低下傾向がみられました(図)。

 

 

さらなる研究結果の蓄積が必要

これまでに主に欧米で行われた先行研究を統合したメタアナリシスの結果では、コーヒー・緑茶と脳腫瘍に予防的な関連を観察していませんでしたが、今回の結果では、コーヒーを1日3杯以上飲むグループで脳腫瘍のリスクの低下がみられました。メタアナリシスに用いられた各研究を個別にみると、コーヒーによる脳腫瘍のリスク低下を報告している研究もありますが、特に、多量摂取(たとえば1日7杯以上)でリスクが上昇している報告があることから、コーヒー摂取には予防的に作用する適切な量がある可能性が示唆されます。コーヒーに含まれる、抗酸化作用やインスリン抵抗性の改善作用のあるクロロゲン酸やトリゴネリンなどの物質が脳腫瘍の発がん抑制に関与している可能性があります。緑茶が脳腫瘍と関係がなかったことから、コーヒーと同様に含まれるカフェインの抗酸化作用はあまり関与していないことが示唆されました。
本研究では、1日3杯以上飲むグループには8例の脳腫瘍しか含まれず、今回の結果が偶然に得られた可能性も否定できません。今後もアジアからのさらなる研究結果の蓄積が必要です。

 

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