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多目的コホート研究(JPHC Study)

野菜・果物摂取と胆管がん

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成7年(1995年)と平成10年(1998)年に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の10保健所管内にお住まいだった、45~74歳の男女約8万人を平成24年(2012年)まで追跡した調査結果にもとづいて、野菜・果物及び栄養素の摂取と胆道系のがん(胆嚢がん・肝内胆管がん・肝外胆管がん)の罹患との関連を調べた結果を専門誌で論文発表しましたので紹介します(Int J Cancer.2017 Mar 1;140(5):1009-1019)。

野菜・果物の摂取は、いくつかのがんに対して予防的に機能する可能性が示唆されていますが、胆嚢がん・肝内胆管がん・肝外胆管がんに対する予防効果を調べた研究は非常に限られています。そこで、私たちは多目的コホート研究にて、野菜・果物および栄養素の摂取量と胆嚢がん・肝内胆管がん・肝外胆管がんの罹患との関連を評価しました。
今回の研究対象に該当した男女約8万人のうち、約14.4年間の追跡期間中に133人が胆嚢がん、99人が肝内胆管がん、161人が肝外胆管がんに罹患しました。研究開始時の質問票をもとに、摂取量によって4つのグループに分け、最も少ないグループと比較して、その他のグループでがんの罹患リスクが何倍になるかを調べました。解析にあたっては、性別、年齢、地域、BMI、喫煙、飲酒、胆石症の既往、糖尿病の既往、慢性肝炎・肝硬変の既往、身体活動量、魚摂取量、赤肉摂取量、緑茶摂取量のグループによる違いが結果に影響しないように配慮しました。

 

野菜・果物を多く摂取するグループで、肝外胆管がんに罹患するリスクが低かった

野菜と果物の合計および野菜の摂取量が多いグループで、肝外胆管がんに罹患するリスクが低下していました。野菜・果物の種類別に解析を行ったところ、緑の葉物野菜について、摂取量が多いグループで、肝外胆管がんに罹患するリスクが低下していました。胆嚢がん、肝内胆管がんに関しては、野菜・果物の摂取に関連したリスクの低下は見られませんでした。

図1. 野菜・果物と肝外胆管がんの関連

 

葉酸、不溶性食物繊維を多く摂取するグループで、肝外胆管がんに罹患するリスクが低かった

野菜・果物に多く含まれる栄養素の解析では、葉酸および不溶性食物繊維の摂取量が多いグループで、肝外胆管がんに罹患するリスクが低下していました。また、ビタミンCの摂取量が増えると、肝外胆管がんのリスクが低下する傾向が見られました。

図2. 栄養素と肝外胆管がんの関連

 

この研究について

今回の研究から、野菜・果物の摂取は肝外胆管がんのリスクを低下させ、葉酸・不溶性食物繊維・ビタミンCがその効果の中心的な役割を果たしている可能性が示唆されました。葉酸はDNAのメチル化やDNA合成・修復に関与し、不溶性食物繊維はインスリン感受性の改善や抗炎症効果など様々な機能、ビタミンCは抗酸化作用を有します。それらの作用が肝外胆管がんの罹患に対し、予防的に機能したのかもしれません。
本研究は過去の研究と比較して最も大規模な研究ですが、それでも胆嚢がん・肝内胆管がん・肝外胆管がんは罹患率が低いがんであるため、統計学的な検出力は限られており、そのため今回得られた結果も偶然の可能性は否定できません。これら胆道系のがんと野菜・果物の関連については、過去の疫学研究も含めて一貫しない結果が報告されており、また研究の数自体もかぎられていることから、今回の結果を確認するためには今後のさらなる研究が必要です。

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