多目的コホート研究(JPHC Study)
食事パターンと死亡リスクとの関連について
―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―
私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の10保健所(呼称は2016年現在)管内にお住まいだった、40~69歳の方々のうち、研究開始から5年後に行った食事調査票に回答した男女約8万人を平成24年(2012年)まで追跡した調査結果にもとづいて、食事パターンと死亡リスクとの関連を調べた結果を専門誌で論文発表しましたので紹介します(PLoS One.2017 Apr 26;12(4):e0174848)。
3つの食事パターン
研究開始から5年後に行った食事調査票の結果から、134項目の食品・飲料の摂取量により、野菜や果物、いも類、大豆製品、きのこ類、海そう類、脂の多い魚、緑茶などが関連した「健康型」、肉類・加工肉、パン、果物ジュース、コーヒー、ソフトドリンク、マヨネーズ、乳製品などが関連した「欧米型」、ご飯、みそ汁、漬け物、魚介類、果物などが関連した「伝統型」の3つの食事パターンを抽出しました。
健康型食事パターンにより全死亡および循環器疾患死亡のリスクが低下
5年後調査時の3つの食事パターンについて、各対象者におけるパターンのスコアにより4つのグループに分類し、その後約14.8年の追跡期間中に発生した死亡(全死亡、がん死亡、循環器疾患死亡、心疾患死亡、脳血管疾患死亡)との関連を調べました。その結果、健康型食事パターンのスコアが高い群では低い群に比べ、全死亡のリスクは約2割、循環器疾患死亡のリスクは約3割低下していました(図1)。
欧米型食事パターンにより全死亡、がん死亡、循環器疾患死亡のリスクが低下
欧米型食事パターンにおいて、そのスコアが高いほど全死亡、がん死亡、循環器疾患死亡のリスクが低下する傾向がみられました(図2)。伝統型食事パターンと死亡リスクとの関連はみられませんでした。
今回の研究では、野菜や果物、いも類、大豆製品、きのこ類、海そう類、脂の多い魚、緑茶などが関連した健康型食事パターンにより全死亡および循環器疾患死亡のリスクが低下するという結果が得られました。この理由として、この食事パターンのスコアが高い群では、多価不飽和脂肪酸やマグネシウムやカリウムなどのミネラルの摂取が多いことによると考えられます。これらの栄養素は、循環器疾患のリスク低下に関連することが報告されており、食事パターンとして総合的にみることで、これらの栄養素の相乗効果も期待できます。
肉類・加工肉、パン、果物ジュース、コーヒー、ソフトドリンク、マヨネーズ、乳製品などが関連した欧米型食事パターンは、全死亡および循環器疾患死亡のリスク低下と関連していました。肉類・加工肉は、全死亡のリスク上昇との関連が報告されていますが、日本人は欧米人に比べ肉類の摂取量が少ないことや、欧米型食事パターンに関連した他の食品(コーヒーや牛乳・乳製品など)の好ましい効果によって、全死亡および循環器疾患死亡のリスクが低下したと考えられます。また、この食事パターンのスコアが高い群では、塩分摂取が少なく、これも循環器疾患死亡のリスクが低下した理由の一つと考えられます。欧米型食事パターンは、がん死亡のリスク低下とも関連していましたが、がんの部位によって関連する栄養・食事因子が異なるため、さらなる研究が必要です。
この研究で用いた食事パターンの分類は、食事調査で摂取量を測定した134品目をもとに行われました。それ以外の食品が含まれたり、対象者が異なれば、パターン分類は違ってくる可能性があります。