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多目的コホート研究(JPHC Study)

チョコレート摂取と脳卒中発症リスクとの関連

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成7年(1995年)と平成10年(1998)年に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古の9保健所管内にお住まいだった、44~76歳(アンケート回答時年齢)の男女約8.5万人を平成22年(2010年)まで追跡した調査結果にもとづいて、チョコレートの摂取と脳卒中の発症との関連を調べた結果を発表しましたので紹介します(Atherosclerosis 2017;260:8-12)。

 

チョコレートの摂取と脳卒中発症リスク

近年、チョコレートに含まれるポリフェノールには抗酸化作用があり、コレステロール値の改善、血圧低下などの研究が数多く報告されているため、チョコレートの健康効果が注目されています。海外の研究では、チョコレートの摂取は循環器病疾患に対して予防的に働く可能性が示されていますが、日本人を対象とした研究は限られています。そこで、本研究では、アンケート調査の結果からチョコレートの摂取量を算出し、脳卒中発症との関連を分析しました。

今回の研究対象に該当した男女84,597万人のうち、約13年間の追跡期間中に3,558人の脳卒中(2,146人が脳梗塞、1,396人が脳出血、16人が不明)発症を確認しました。チョコレートの摂取量の順に4分位のグループに分け、最も少ないグループと比較して、その他のグループで脳卒中の発症リスクが何倍になるかを調べました。解析にあたっては、年齢、地域、BMI、喫煙、飲酒、職業、高血圧治療、高コレステロール血症治療、身体活動量、魚摂取量、赤肉摂取量、コーヒー摂取量、果物摂取量、野菜摂取量、大豆製品摂取量、緑茶摂取量を統計的に調整し、脳卒中の発症に影響を与える他の要因が、今回の結果に影響しないように配慮しました。 

 

女性ではチョコレートを多く摂取するグループで脳卒中リスクが低い

図に示すように、女性では、チョコレートの摂取量が最も多い群(中央値37.5g/週)で、最も少ない群(中央値0 g/週)に比べて、脳卒中の発症リスクが16%低い結果となりました。男性では、チョコレートの摂取と脳卒中発症との関連は見られませんでした。

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 脳卒中の病型別(脳梗塞、脳出血)に関連を分析しましたが、発症人数が少なくなるため、いずれも統計学的に有意な結果とはなりませんでした。

 

この研究について

今回の研究により、日本人の女性において、チョコレートの摂取が脳卒中の発症リスクを低下させる可能性が示されました。チョコレートやチョコレートの成分と同じココアには、ポリフェノールという栄養成分が含まれており、ポリフェノールの摂取により、一酸化窒素(NO)という物質が血管壁でつくられ、その一酸化窒素には血管を拡張させる作用があるため、血圧の低下に働くことが報告されています。先行研究を多く集めて総合的に検討したメタアナリシスの結果でも、チョコレートおよびココア製品の摂取により、短期間に収縮期血圧の平均値を2~3 mmHg低下させることが示されています。また、インスリンを効きやすくすることで血糖値を改善する効果やHDLコレステロール値を増加させる作用があることも報告されています。そのほか、ポリフェノールによる動脈硬化の抑制効果、血栓の形成を抑制する作用、および炎症を抑える作用なども報告されており、これらが、チョコレートの脳卒中発症に対する予防効果として考えられます。

本研究は過去の研究と比較して最も大規模な研究ですが、脳卒中とチョコレートの関連については、研究の数も多くなく、結果が一致していないことから、今後のさらなる研究結果の蓄積が必要です。

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