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現在までの成果

身体活動・運動強度と死亡との関連

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・虚血性心疾患・糖尿病などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防や健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の10保健所(呼称は2017年現在)管内にお住まいだった方々で、2000年と2003年に行った10年後調査にご協力いただいた50~79才の男女約8万3千人の方々を、平成24年(2012年)まで追跡した調査結果にもとづいて、実施していた身体活動・運動(以下、身体活動)の強度と死亡率との関連を調べた結果を、専門誌で論文発表しましたので紹介します。 (Medicine & Science in Sports & Exercise, 2017 ウェブ先行公開)

これまで身体活動には、肥満や心血管疾患を予防することや、死亡のリスクを下げる等、様々な健康利益があることが報告されています。このため、厚生労働省や世界保健機関(WHO)では、ガイドラインを定めて、健康増進のための身体活動を推奨しています。
特に、WHOの身体活動ガイドラインでは、次の3パターンを実施することが勧められています。

パターン① 中強度の身体活動(ウォーキングやゴルフ等、軽く息が弾む程度のもの)を週150分以上
パターン② 高強度の身体活動(ジョギング、サイクリング、サッカー等、呼吸が乱れる程度もの)を週75分以上
パターン③ 同程度の総身体活動量(活動強度×活動時間)になれば、パターン①とパターン②を組み合わせて、実施してもよい

 

しかし、これまで、中強度の身体活動と高強度の身体活動のどちらがより健康に良い影響を与えるのか、詳しく検討した研究は少ない状況でした。

  

活動強度によらずガイドラインを満たす程度の身体活動を実施する事が重要

10年後調査時のアンケート調査で、がんや心血管疾患の既往が無く、身体活動に差し支える程度の身体機能制限がなかった83,454人を対象としました。本研究では、普段、行っている運動・スポーツに関する質問項目のうち、「テニス・ジョギング・エアロビクス・水泳などの激しい運動」を高強度の身体活動、「ウォーキングなど速足で歩く」及び「ゴルフ・ゲートボール・庭いじりなどの軽・中程度の活動」を中強度の身体活動と定義し、それぞれ頻度と時間から強度別の身体活動時間を計算しました。その上で、ガイドラインが推奨する身体活動量を満たしていない群(A群)、満たしている群は、中強度の身体活動のみ(B群)、中強度+少しの高強度(C群)、中強度+かなりの高強度(D群)の、合計4つに分類しました(総身体活動量に占める高強度の割合が30%以内の場合を“少しの高強度”、それより多い場合を“かなりの高強度”としました)。A群に比べて、その他の群(B~D群)の死亡率がどの程度異なるのか、解析を行いました。
その結果、ガイドラインを満たさない群(A群)に比べて、男性の場合、B群で25%、C群で27%、D群で24%、統計学的有意に死亡率が低いことが認められました(図)。同様に、女性でも、A群に比べて、B群で29%、C群で25%、D群で26%、統計学的有意に死亡率が低いことが認められました(図)。しかし、ガイドラインを満たす群(B~D群)の間で、死亡率に統計学的に有意な差はなく、活動強度による差は認められませんでした。死亡原因になるような病気になったことにより、身体活動が制限されることによる影響を除くために、調査開始後3年以内の死亡を除外した解析も行いましたが、結果は変わりませんでした。
この研究から、どのようなパターンであれ、男女ともガイドラインを満たす身体活動を実施することで、良好な健康効果が得られることが再確認できました。

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結果の注意点

本研究から得られた結果は、中強度の身体活動のみを実施する場合と、高強度の身体活動を組み合わせて実施する場合で、ほぼ同等の健康効果が期待できるというものでした。取り組みやすい中強度の身体活動でも健康効果が期待できるという結果は、多くの方が身体活動を気軽に行う励みになると思われます。
また、今回の調査で使用されたアンケートは、行動記録等の手法による詳細な情報から推計した身体活動との妥当性は検証されていますが、身体活動時間の評価はすべて自己申告(アンケート調査)であるので、今後はより客観的な評価方法でこの結果の正しさを確認したり、どのくらいの強さで何分くらい行うと、どのくらいの効果が得られるのかを定量的に評価したりする研究が必要と考えられます。本研究では統計学的に様々な関連要因を考慮しましたが、考慮しきれなかった他の要因が結果に影響をおよぼした可能性は否定できません。

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