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現在までの成果

女性生殖関連要因と全死亡および疾患別死亡リスクとの関連について

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田、東京都葛飾の11保健所(呼称は2018年現在)管内にお住まいだった方々のうち、がんや循環器疾患になっていなかった40~69歳の女性約4万人を、平成26年(2014年)まで追跡した調査結果にもとづいて、女性生殖関連要因と全死亡および疾患別死亡リスクとの関連を調べました。その研究結果を論文発表しましたので紹介します(Annals of epidemiology 2018年6月 ウェブ先行公開)。

出産や月経状況などの女性生殖関連要因と健康との関連について、これまで多くの報告がされており、過去の研究では出産や初潮などの要因やそれと共に変動する性ホルモンの影響が死亡リスクと関連していると報告されていますが、一貫した結果が得られていません。また、過去の研究結果は欧米諸国から報告されているものが多く、日本人を対象とした女性生殖関連要因と死亡との関連については、大規模な疫学研究からは明らかにされていませんでした。そこで、私たちは日本人女性を対象として、女性の生殖関連要因と死亡リスクとの関連について検討しました。

研究開始時のアンケート調査における出産や月経に関する情報を用いて、出産経験、出産人数、授乳経験、初産年齢、初潮年齢、閉経年齢、生殖可能期間(初潮から閉経までの年数)、月経周期、およびホルモン剤使用の有無と、その後の死亡との関連について分析しました。本研究の追跡調査中に、4,788人の女性の死亡が確認されました。

 

出産経験や授乳経験がある女性、閉経年齢が高い女性は死亡リスクが低い

死亡に関連する他の要因の影響を統計学的に考慮した分析の結果、出産経験がない女性と比較すると、出産経験がある女性では全死亡リスクが26%低くなっていました(図1)。さらに、出産経験のある女性のうち、出産数が1人のグループと比較して2人あるいは3人のグループで全死亡リスクが低く、授乳経験がある女性では授乳経験がない女性と比較して全死亡リスクが19%低い結果となりました。一方、初産年齢が低いグループに比べて、最も初産年齢が高いグループでは全死亡リスクが高くなりました。月経に関連する要因のなかで、初潮年齢が低い、閉経年齢が高い、生殖可能期間が長い女性ほど全死亡リスクが低くなりました。月経周期やホルモン剤の使用について統計学的に有意な関連はみられませんでした。分析対象を閉経後女性や非喫煙者に限定してもこれらの結果は大きくは変わりませんでした。

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出産経験がある女性は、疾患別死亡においてもリスクが低い

4大死因である心疾患、脳卒中、呼吸器疾患、全がん、さらにがんの部位別死亡リスクを分析した結果、出産経験がない女性と比べて出産経験のある女性は、心疾患、脳卒中、全がん、乳がん、卵巣がんで死亡するリスクが統計学的有意に低くなりました(図2)。さらに、授乳経験がある女性は脳卒中、全がん、卵巣がんの死亡リスクが低く、生殖可能年齢が長いほど心疾患、脳卒中、呼吸器疾患による死亡リスクが低くなりました(図なし)。

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この研究から明らかになったこと

先行研究と同様に出産経験がある女性は、全死亡、心疾患死亡、脳卒中死亡、全がん死亡、乳がん死亡、および卵巣がん死亡のリスクが低いことが明らかになりました。これらのメカニズムは十分に明らかになっていませんが、親であることによる社会的・心理的変化が健康的な生活の選択などにつながり、死亡リスクが下がるのではないかと考えられています。授乳経験については、授乳中に分泌されるホルモンが肥満や糖尿病に対して予防的に作用し、死亡リスクを下げると考えられます。閉経が遅い、また生殖可能期間が長いほど死亡リスクが低くなりましたが、エストロゲンなどの性ホルモンの暴露期間が長くなることで、特に循環器疾患の予防効果が得られたと考えられます。

女性の生殖関連要因は、時代や社会的背景、医療技術の発達などによって変化します。日本人を対象とした大規模な疫学研究が多くないことから、今後も研究結果の蓄積が必要です。

 

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