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現在までの成果

食事調査票から得られた食事由来の抗酸化能の正確さについて

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。食生活と病気との関連を明らかにする研究では、1人1人の食生活を把握する方法の一つとして、食物摂取頻度調査票(FFQ)という比較的簡易なアンケートを用いて、各個人の習慣的な摂取量を推定しています。このFFQから推定した摂取量の正確さを確認することは、食生活と病気との関連について調べた研究結果の信頼性を確保するために必要な過程です。今回、多目的コホート研究の研究開始から5年後に用いられたFFQから、食事由来の抗酸化能の推定を行い、その正確さを調べた結果を専門誌で論文発表しましたので紹介します(Journal of Epidemiology. 2018年7月ウェブ先行公開)。 

 

抗酸化能とは

抗酸化物質(ビタミンCやビタミンEなど)の摂取は、酸化ストレスを減少させ、さまざまな疾病リスクを低下させることが報告されてきました。私たちは食事を通してさまざまな抗酸化物質を摂取しているため、食事からの抗酸化物質摂取量を把握することが重要ですが、その手段として、食品の抗酸化能*1を算出し評価する手法があります。近年、この抗酸化能を推定する3つの測定方法*2が開発され、実際の食事全体から推定することが可能になりましたが、FFQによる抗酸化能の妥当性(FFQから推定した抗酸化能の確からしさ)、再現性(同じ人に繰り返し調査を行い、同じ値が得られるか)は十分に確認されていないのが現状でした。

*1食品の抗酸化能: 本研究による食品の抗酸化能とは、体内酵素ではない物質が抗酸化作用を発揮する非酵素的な能力を指し、体内酵素による抗酸化能と区別される。

*2 3つの測定方法: 鉄還元抗酸化能(ferric reducing-antioxidant power, FRAP)法 酸素ラジカル吸収能(oxygen radical absorbance capacity, ORAC) 法 総ラジカル捕獲抗酸化能(total radical-trapping antioxidant parameter, TRAP)法

 

研究方法の概要と主な結果

多目的コホート研究に参加した男女のうち、5年後調査で用いられたFFQに1年間隔で2回答え、さらに28日間の食事記録調査(DR)にご協力いただいた497人の男女を対象としました(コホートⅠは209名、コホートⅡは288名)。公表されている抗酸化能のデータベースを用いて各食品に抗酸化能の値を割り当て、摂取量を掛け合わせ合計することで、FFQとDRの2つの食事方法の、FRAP法、ORAC法、TRAP法による抗酸化能を算出し、その相関係数を計算しました。

 

妥当性結果

FFQから推定した抗酸化能(FRAP法、ORAC法、TRAP法)は、飲料類(94%以上が緑茶由来)、果物類、野菜類が、主に寄与していました。DRも同様の傾向でした。
FFQとDRから得られた食事由来の抗酸化能の相関係数(この値が1に近いほど簡易なFFQでの摂取量推計が確からしいことを示す)は、男女でFRAP法0.52、ORAC法0.54、TRAP法0.52でした。男性では、FRAP法0.46、ORAC法0.53、TRAP法0.47でした。女性では、FRAP法0.54、ORAC法0.49、TRAP法0.53でした。これらの相関係数値は欧米で報告されている先行研究の結果と同様の値でした。
更に、FFQとDRから推定した食事由来の抗酸化能を少ない順から5等分にわけ(五分位:Q1~Q5)、両者の一致の割合を比較した結果、同順位もしくは隣接するグループ(図の青色)の割合は男女でFRAP法とTRAP法で73%、ORAC法で72%でした。最も外れたグループ(図のオレンジ色)はFRAP法とORAC法で2%、TRAP法で1%でした。男女別でも同様な結果を示し、FFQから推定した食事由来の抗酸化能は、DRから推定した場合とほぼ同様の順位を示しました。

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図.抗酸化能推定摂取量のランキングの一致割合の判別方法

 

再現性結果

測定の再現性を確認するため、1年間隔で2回行ったFFQから食事由来の抗酸化能を推定し、それらの結果が類似しているかを検討しました。2回測定の相関係数は、男女でFRAP法0.64、ORAC法0.65、TRAP法0.65でした。男性では、FRAP法0.57、ORAC法0.59、TRAP法0.59でした。女性では、FRAP法0.67、ORAC法0.59、TRAP法0.67と比較的良好な結果を示しました。

 

この研究から明らかになったこと

これらの結果から、FFQで得られた食事由来の抗酸化能の妥当性と再現性は、FRAP法、ORAC法、およびTRAP法ともに、疫学研究を行うために必要な、ある程度の正確さがあることが分かりました。この結果は、今後、多目的コホート研究で食事由来の抗酸化能とがん、脳卒中、心筋梗塞などとの関連を分析する際の重要な基礎資料となります。

 

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