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現在までの成果

女性関連要因と腰椎骨折との関連について

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、東京都葛飾区、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の11保健所(呼称は2018年現在)管内にお住まいだった40~69歳の女性のうち、調査開始時点で腰椎骨折やがんなどの既往のない約4万3千名の対象者を10年間追跡した調査結果にもとづいて、女性関連要因と自己申告による腰椎骨折との関連を調べた結果を専門誌で論文発表しましたので紹介します。(Osteoporosis International、2018年8月、ウェブ先行公開)

骨粗鬆症が原因でおこる高齢者の腰椎骨折は、特に女性で加齢と共に著しく増加し、要介護の原因や、要介護から死亡に至るリスクが高まることが報告されています。エストロゲンという女性ホルモンは、骨の代謝に関わり、骨折に予防的に働くと報告されており、エストロゲンの血中濃度が、月経周期や妊娠・出産などにより影響を受けることから、これらの女性関連要因が腰椎骨折と関連している可能性があります。これまでの研究では、女性関連要因は骨粗鬆症が原因の手足の骨折と関連することが報告されていますが、日本において腰椎骨折との関連についての報告はありません。

研究開始時のアンケート調査から、初潮年齢、月経規則性、出産経験と回数、初産年齢、授乳経験、女性ホルモン剤服用経験、閉経の種類と年齢、初潮から閉経までの期間(生殖可能期間)、閉経後の期間と、10年間の腰椎骨折発症との関連を調べました。腰椎骨折の発症は、研究開始から10年後に行ったアンケート調査で、過去10年間に初めて腰部の骨折(交通事故や労務事故を除く)を診断されたことがあると回答した場合としました(腰椎骨折の発症申告者250人)。

 

初潮年齢が遅い、月経が不規則であると腰椎骨折のリスクが高くなる。一方、生殖可能期間が長いと、腰椎骨折のリスクが低くなる。

腰椎骨折のリスクは、初潮年齢が13歳以下と比べて16歳以上で2.08倍高く、月経が規則的な女性と比べて不規則な女性で1.42倍高くなりました(図)。一方、閉経後女性では、初潮から閉経までの期間(生殖可能期間)が1年間長くなるたびに腰椎骨折のリスクが0.96倍低くなりました(図)。また、初潮年齢が15歳以上でかつ月経が不規則であると、初潮年齢が14歳以下でかつ月経が規則的である女性に比べて、腰椎骨折のリスクが2倍以上(女性全体で2.37倍、閉経後女性で2.25倍)高くなりました(図なし)。

 

図. 女性関連要因と腰椎骨折との関連

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年齢、地域、体格指数(Body Mass Index)、喫煙、飲酒、運動、食事からのカルシウム摂取量、女性関連要因で統計学的に調整
は統計学的有意(P<0.05)

 

この研究から得られたこと

今回の研究では、初潮年齢が遅いこと、月経が不規則であること、初潮から閉経までの期間(生殖可能期間)が短いことが、腰椎骨折リスクの高さと関連があることが示されました。これらの関連は、エストロゲンにさらされる期間が短いか、エストロゲンの分泌量が低い結果として、腰椎骨折のリスクを高めた可能性を示唆しています。一方、女性ホルモン剤を服用したことのある女性のほうが腰椎骨折のリスクが高く、女性ホルモンであるエストロゲンの予防的作用と逆の結果が得られましたが、今回の研究では女性ホルモン剤の種類、量、服用年齢と期間などについて詳細な把握がなく、女性ホルモン剤と腰椎骨折に関しては疫学的なエビデンスが十分とはいえないため、さらなる研究が必要です。

本研究は、日本人で、女性関連要因と腰椎骨折との研究を明らかにした初めての研究です。女性関連要因は時代や社会的背景などで変化しますので、今後も研究結果の蓄積が必要です。

 

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