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多目的コホート研究(JPHC Study)

果物・野菜摂取と膵がん罹患の関連について

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成7年(1995年)と平成10年(1998)年に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の10保健所(呼称は2018年現在)管内にお住まいだった、45~74歳の男女約9万人を平成25年(2013年)末まで追跡した調査結果にもとづいて、果物・野菜摂取と膵がん罹患の関連を検討した論文発表の内容を紹介します(Int J Cancer.2019 Apr 15;144(8):1858-1866)。

果物・野菜の摂取は、いくつかのがんに対する予防的効果の可能性が示されていますが、膵がんとの関連について、これまでの研究結果は一定していません。そこで、私たちは多目的コホート研究において、果物・野菜の摂取量と膵がんの罹患との関連を検討しました。

138食品が含まれる食品摂取頻度調査をもとに、果物(17品目)・野菜(29品目)の摂取量によって4つのグループに分け、最も少ないグループと比較して、その他のグループでがんの罹患リスクが何倍になるかを調べました。解析では、性別、年齢、地域、BMI、喫煙、飲酒、糖尿病既往、膵がん家族歴、魚摂取量、肉摂取量、運動習慣、コーヒー摂取、エネルギー摂取量について、果物・野菜摂取のグループによる違いが結果に影響しないように統計学的に配慮しました。

 

果物摂取は膵がんのリスクをさげる(図)

今回の研究対象に該当した男女約9万人のうち、約16.9年間の追跡期間中に577名が膵がんと診断されました。全果物摂取量の最も多いグループでは、最も少ないグループに比べて膵がん罹患のリスクが低下していました(図)。柑橘類(3品目)に限定してみても、ほぼ同程度でリスクが低下していました(図)。果物摂取と膵がん罹患リスク低下の関連は、非喫煙者でより明瞭でした(図なし)。一方、全野菜摂取の最も多いグループでは、最も少ないグループに比べて膵がんリスク増加が認められました(図)。特定の種類の野菜では、膵がんリスクとの関連は明らかではありませんでした(図)。全野菜摂取と膵がん罹患リスク増加の関連は、喫煙者においてのみ統計学的に有意でした(図なし)。

 

図. 果物・野菜摂取と膵がん罹患リスク

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この研究について

果物摂取は、膵がん罹患のリスク低下と関連が認められました。果物に含まれる、ビタミン等の抗酸化成分が膵がんのリスク低下に関係していると考えられました。一方で、野菜摂取は、リスク増加との関連が認められましたが、喫煙者でリスクの増加が顕著になることから、野菜とタバコに含まれる成分との相互作用の可能性が考えられましたが、明確な理由はわかりませんでした。

今回の研究は、日本人において、これまででは最大規模ではありますが、症例数が必ずしも多くはなかったので、偶然の結果の可能性も否定できません。日本人を含むアジアにおける疫学研究が少ないため、さらなる研究の蓄積が必要です。

 

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