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現在までの成果

喫煙習慣の変化と全死因・肺がん死亡との関連

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)と平成5年(1993)年に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の10保健所(呼称は2018年現在)管内にお住まいだった、40~69歳の男女約9万8千人を2007年まで追跡した調査結果にもとづいて、喫煙習慣の変化と全死因・肺がん死亡との関連を調べた結果を専門誌で論文発表しましたので紹介します(Journal of Epidemiology 2018年7月WEB先行公開)。

喫煙は死亡や肺がんのリスク要因であり、禁煙者の死亡リスクが喫煙継続者に比べて低いことがこれまでのコホート研究などで示されていますが、多くの研究では観察開始時の喫煙状況が変化しないと仮定しているため、長期的な喫煙習慣の影響はよくわかっていません。そこで、私たちは喫煙と全死因死亡・肺がん死亡との関連を、観察期間中に喫煙状況を固定する設定(モデル1)と変動する設定(モデル2)のそれぞれについて検討し、喫煙習慣の変化がもたらす影響について検討しました。

 

追跡期間中に生じた喫煙習慣の変化を考慮した解析

本研究では、研究開始時のベースライン、5年後、10年後に調査を実施し、3回のアンケートにより喫煙状況を把握しました。平均14.2年の追跡期間中に、10,702人の全死因死亡(そのうち、肺がん死亡は870人)が確認されました。モデル1では観察期間中に喫煙状況が変化しない設定として、ベースライン調査の情報しか使わない解析を行いました。一方、モデル2では3回のアンケート調査を用いて、喫煙状況の変化を考慮した上で解析を行いました(図1)。

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喫煙変化を考慮した解析による過去喫煙者の死亡リスクが高くなった

全死因死亡も肺がん死亡も相対危険度については、現在喫煙者では二つのモデルの推定値にはあまり違いはありませんが、過去喫煙者では男女ともモデル1(灰色)に比べて、モデル2(黄色)の推定値の方が高い傾向にありました(全死因:男性1.22倍→1.42倍、女性1.43倍→1.46倍;肺がん:男性1.90倍→2.98倍、女性0.77倍→1.83倍)(図2、3)(赤字:P<0.05)。つまり、観察期間中の喫煙状況の変化を考慮しない解析と比べて、喫煙変化を考慮した解析による過去喫煙者の死亡リスクが高くなっていました。

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追跡期間中に病気のために禁煙した人の死亡リスクは喫煙継続者のよりも高かった

研究開始から5年後と10年後の調査では、アンケートで禁煙理由を聞いていましたので、禁煙理由によって、死亡リスクがどう異なるのかを調べました。その結果、全死因死亡と肺がん死亡のリスク比について、病気が理由で止めた過去喫煙者のリスク比は、継続喫煙者のリスク比よりも高いことが示されました。

 

この研究について

今回の研究から、喫煙状況の変化を考慮した解析では、過去喫煙者の死亡リスクが高まり、病気のために禁煙した人の死亡リスクは喫煙継続者のリスクよりも高かったことが示唆されました。喫煙状況の変化を考慮したモデル2では、過去喫煙者に新たな禁煙者が加わることで、より正確に過去喫煙者の評価ができ、過去喫煙者では死亡リスクが高かったと考えられます。

今回の解析から、生活習慣の変化を考慮することが重要であることが示唆されました。今後、肺がんだけでなく、循環器疾患など他の喫煙関連疾病においても同様の評価が重要となると考えられます。

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