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現在までの成果

食事調査票から得られた単純糖質摂取量の正確さについて

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。食生活と病気との関連を明らかにする研究では、1人1人の食生活を調べる方法の一つとして、食物摂取頻度調査票(FFQ)という比較的簡易なアンケートを用いて、各個人の習慣的な食品や栄養素の摂取量を推定しています。このFFQから推定した摂取量と病気との関連を調べるためには、摂取量がどのくらい正確に推定できているかを確認することが大切です。今回、平成2年(1990年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、東京都葛飾区の5保健所管内(コホートⅠ)と、平成5年(1993年)に茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の6保健所管内(コホートⅡ)にお住まいだった方々のうち(管内呼称は2019年現在)、研究開始から5年後に用いられたFFQから、単純糖質(ブドウ糖、果糖、ガラクトース、ショ糖、麦芽糖、乳糖)の摂取量を推定し、その正確さを調べた結果を専門誌で論文発表しましたので、紹介します(Nutrients. 2019年3月公開)。

 

単純糖質について

単純糖質は、炭水化物の一種で、単糖類(ブドウ糖、果糖、ガラクトースなど)や二糖類(ショ糖、麦芽糖、乳糖など)を指します。ブドウ糖、果糖、ショ糖は、主に甘味料、菓子類、ソフトドリンク、果実、および野菜などに含まれ、麦芽糖は主に穀類、芋類などに含まれます。また、ガラクトースや乳糖は主に乳製品に含まれています。炭水化物には他に複合糖質である少糖類、多糖類(でん粉など)や、食物繊維がありますが、人のからだの中でのはたらきは異なります。

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近年、世界的に肥満者の数は増加しており、肥満は慢性疾患のリスクを高める要因の一つとして問題となっています。肥満の増加には単純糖質の過剰摂取が関係すると考えられており、単純糖質の摂取量が健康に及ぼす影響が着目されています。しかし、日本人においては、これまで、どの食品にどれだけの単純糖質がはいっているかを示した食品成分表がなく、摂取の状況や健康への影響は十分にわかっていませんでした。このようななか、2015年に単純糖質の含有量を収載した炭水化物成分表が発表され、単純糖質の摂取量を推定することができるようになりました。しかし、単純糖質摂取量と慢性疾患との関連を明らかにするためには、その前に、その推定方法の確からしさを検証する必要があります。

 

研究方法の概要

多目的コホート研究に参加した男女のうち、5年後調査で用いられたFFQに1年間隔で2回答え、さらに28日間の食事記録調査(DR)にご協力いただいた551人の男女を対象としました(コホートⅠは212名、コホートⅡは339名)。単純糖質摂取量をFFQとDRの2つの食事調査方法によって、それぞれ算出しました。
 さらに、単純糖質摂取量の客観的な指標である尿中の糖濃度(ショ糖と果糖の尿中濃度の合計)を用いて、妥当性を検証しました。24時間の蓄尿をご提供いただいたコホートIの72名(男性27名、女性45名)について、尿中に排泄される糖の濃度を調べ、FFQから算出した単純糖質摂取量との相関係数を計算しました。

 

摂取の状況

DRから算出した単純糖質摂取量について、食品群の割合を調べました。単純糖質は、多い順に、男性では果実類、野菜類、砂糖・甘味料類、菓子類、乳製品類、ソフトドリンク類から摂取しており、女性では果実類、菓子類、乳製品類、砂糖・甘味料類、野菜類、ソフトドリンク類から摂取していました(図1)。

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妥当性

FFQから得た単純糖質摂取量と尿中の糖濃度(µg/mL)の相関係数(この値が1に近いほどFFQによる摂取量推計が確からしいことを示す)は、0.40でした。さらに、FFQとDRから得た単純糖質摂取量の相関係数は、コホートIの男性で0.57、女性で0.41、コホートIIの男性で0.56、女性で0.34でした(表1)。

 

再現性

測定の再現性を確認するため、1年間隔で2回行ったFFQから摂取量を推定し、それらの結果が類似しているかを検討しました。2回測定の相関係数は、単純糖質摂取量ではコホートIの男性で0.63、女性で0.55、コホートIIの男性で0.66、女性で0.63でした(表1)。

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この研究結果からわかること

これらの結果から、FFQで得られた単純糖質摂取量の妥当性と再現性は、疫学研究を行うために必要な、ある程度の正確さがあることが分かりました。また、欧米の成人では、一日の総エネルギー摂取量に占める単純糖質の割合は約20%であり、ソフトドリンクからの摂取が最も多いことが報告されています。これと比較すると、今回の研究結果では、単純糖質摂取量が総エネルギー摂取量に占める割合は、日本人は欧米よりも少なく(男性で約10%、女性で約14%)、また、男女ともに日本人は果実からの摂取が最も多かったことから、摂取源となる食品も欧米と異なることがわかりました。この結果は、今後、多目的コホート研究で単純糖質摂取量と糖尿病、がん、脳卒中、心筋梗塞、などとの関連を分析する際の重要な基礎資料となります。

 

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