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多目的コホート研究(JPHC Study)

沖縄野菜摂取量と糖尿病との関連について

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、脳卒中・虚血性心疾患、がんなどの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っております。平成7年(1995年)に沖縄県中部、平成10年(1998年)に沖縄県宮古の、合わせて2保健所(呼称は2019年現在)管内にお住まいだった45~74歳のうち、糖尿病や循環器疾患、がんの既往などのない追跡可能な約1万1千人を対象として、5年間追跡した調査結果にもとづいて、沖縄野菜摂取量と糖尿病発症との関連を調べた結果を、専門誌で論文発表しましたのでご紹介します(J epidemiol.2020 May 5;30(5):227-235)。

野菜や果物に含まれる抗酸化物質の摂取により、糖尿病リスクが低下することが欧米の研究で報告されています。わたしたちの研究では、野菜・果物の摂取と糖尿病発症との関連はみられませんでしたが、抗酸化物質を多く含む緑の葉野菜やアブラナ科野菜摂取量が多い人では糖尿病リスクが若干低下することを報告しています。 (野菜・果物摂取と糖尿病との関連について) 沖縄野菜には比較的多くの抗酸化物質などが含まれており、実験動物を使用した研究などでは沖縄野菜の摂取によって糖尿病を予防・改善することが報告されています。しかし、これまでの疫学研究では、沖縄野菜摂取量と糖尿病発症との関係について検討した研究はありませんでした。そこで、私たちは、沖縄県在住の日本人10,732人(男性4,714人・女性6,018人)における沖縄野菜摂取量と糖尿病発症との関連を調べました。なお、本研究では、138項目の食物摂取頻度質問票(FFQ)の回答を用い、7項目の沖縄野菜(チンゲン菜、からし菜、にがうり、フダンソウ、ヘチマ、ヨモギ、パパイヤ)より沖縄野菜摂取量を推定し、その摂取量によって3つのグループに分けました。その後、沖縄野菜摂取量が一番少なかったグループを基準とし、その他のグループのその後の糖尿病発症リスクとの関連を検討しました。

 

沖縄野菜摂取量と糖尿病発症には関連がみられなかった

食事調査後の5年後のアンケートで、216人(男性123人、女性93人)が、追跡期間内に糖尿病と診断されたことがあると回答しました。解析にあたっては、肥満度などの糖尿病発症に関連する要因の影響をできるだけ取り除きました。
その結果、男女ともに沖縄野菜摂取と糖尿病発症リスクとの間に、統計学的に有意な関連性は認められませんでした(図1)。また、個別の沖縄野菜と糖尿病発症との関連についても、統計学的に有意な関連性は認められませんでした。

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※年齢、地域、BMI、喫煙、飲酒、身体活動、高血圧既往、糖尿病の家族歴、エネルギー摂取量、コーヒー摂取量、肉・米飯・野菜(沖縄野菜以外)・フルーツ摂取量で統計学的に調整

 

この研究結果よりみえてきたこと

本研究の結果から、沖縄野菜摂取は糖尿病発症と関連しないことが示されました。今回の研究では、沖縄県在住者に対象者を限定しており、沖縄野菜摂取量の少ないグループと多いグループでの差が小さかったことにより、関連が検出されなかった可能性も考えられます。近年では、沖縄野菜は沖縄県以外の地域でも摂取することが多くなりました。今後は、沖縄県以外の方も対象者とした、さらなる研究が必要と思われます。

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