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現在までの成果

がん・糖尿病への罹患と軽度認知障害・認知症との関連

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)に長野県佐久保健所管内の南佐久郡8町村にお住まいでアンケートに回答した40~59歳の約1万2千人のうち、平成26-27年(2014-15年)に行った「こころの検診」に参加した方の中で、「こころの検診」までに脳卒中に罹患した方を除いた1,244人のデータにもとづいて、中年期のがんおよび糖尿病への罹患と軽度認知障害・認知症との関連を調べた結果を専門誌で論文発表しましたので紹介します(Psychiatry and Clinical Neuroscience 2019年6月ウェブ先行公開)。

海外のある研究では、認知症の3分の1は、その危険因子をとりのぞくことで予防されると推計されており、正常と認知症の中間といわれる軽度認知障害や、認知症を、早期に発見し予防につなげることが重要であると考えられています。

糖尿病は認知症とがんの両方の危険因子として知られていますが、これまでの海外からの研究では、がんが認知症の危険因子かどうかの結果は研究間で一致しておらず、がんと糖尿病の合併が軽度認知障害や認知症のリスクにどのように影響しているかを調べた報告はありません。そのため、私たちは、中年期におけるがんと糖尿病への罹患が、その後の認知機能に与える影響を調べました。 軽度認知障害と認知症の診断は、記憶やその他の認知機能に関する4つの検査と、医師の判定により行われました。

 

がんと糖尿病の合併は、軽度認知障害・認知症のリスク上昇に関連

こころの検診において、1,244人のうち、421人が軽度認知障害、60人が認知症と診断されました。がんと糖尿病のそれぞれについて、罹患していなかったグループ(-)と罹患していたグループ(+)の、その後の軽度認知障害と認知症のリスクを比較しました。その結果、糖尿病のないグループと比較して、糖尿病に罹患していたグループで認知症リスクの統計学的有意な上昇がみられました(図1)。また、がんと糖尿病の罹患の組み合わせから、がんと糖尿病のどちらにも罹患していないグループ【がん(-)、糖尿病(-)】と比較した場合の、その他のグループのリスクを比較したところ、がんと糖尿病の両方に罹患しているグループ【がん(+)、糖尿病(+)】で、軽度認知障害と認知症のリスクが統計学的有意に高いことが示されました(図2)。

図1 .がん・糖尿病罹患と軽度認知障害、認知症

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図2.がん・糖尿病罹患の組み合わせと軽度認知障害、認知症
 

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年齢、性別、教育歴、アルコール摂取、喫煙、運動、魚摂取量で統計学的に調整

 

この研究からわかること

今回の研究で、中年期にがんと糖尿病を合併していることで、軽度認知障害や認知症のリスクが高くなる可能性が示されました。糖尿病はインスリン抵抗性を高めることでがんのリスク要因となることが知られています。また、がんの罹患後にインスリン抵抗性が高くなることも報告されています。インスリン抵抗性の高さは認知症の発症メカニズムに関与することが報告されていることから、がんと糖尿病が合併したグループでは、他のグループよりもインスリン抵抗性が高く、結果として認知症リスクが上昇した可能性が考えられました。
本研究の限界として研究参加人数が比較的少ないこと、「こころの検診」は地域住民の一部の参加者で実施されたこと、研究開始時の軽度認知障害と認知症を除外できていないことなどが挙げられ、示された結果は一般的な集団と異なる可能性があります。今後は、それらを考慮した、さらなる研究結果の蓄積が必要です。

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