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現在までの成果

動物性・植物性たんぱく質の摂取と死亡リスクとの関連

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、東京都葛飾区、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の11保健所(呼称は2019年現在)にお住まいだった40~69歳の方々のうち、研究開始から5年後に行った食事調査票に回答し、がん、循環器疾患、腎疾患になっていなかった約7万人を、平成28年(2016年)まで追跡した調査結果にもとづいて、動物性・植物性たんぱく質摂取量とその後の死亡リスクとの関連を調べた結果を専門誌で論文発表しましたので紹介します(JAMA Int Med 2019年8月)。

近年、たんぱく質を多く摂取することの健康への影響について関心が高まっています。高たんぱく質食を短期間摂取してもらったグループは、通常のたんぱく質食を摂取したグループより、体重や体脂肪の減少に効果的であったという研究が報告されており、これは空腹を知らせるアミノ酸の調節に関わり、そのことが、満腹感を増加させ、摂取エネルギー量を減少させることに関係している可能性があると考えられています。また、高たんぱく質食は、循環器疾患の危険因子である、血圧や血中脂質の改善に関係することも報告されています。しかし、長期の高たんぱく質食と死亡リスクとの関係はまだよくわかっていません。また、たんぱく質に含まれているアミノ酸は、動物性たんぱく質と植物性たんぱく質で構成が異なるため、健康への影響が異なる可能性があります。そこで、私たちは、多目的コホート研究において、動物性・植物性たんぱく質摂取量と死亡リスクとの関連について検討しました。

研究開始から5年後に行なったアンケート調査の結果を用いて、総たんぱく質・動物性たんぱく質・植物性たんぱく質摂取量を計算し、総エネルギーに対する割合を算出しました。総エネルギーに対するたんぱく質の割合を等分に、5つのグループに分け、その後平均18年間の死亡(総死亡・がん死亡・循環器疾患死亡・心疾患死亡・脳血管疾患死亡)との関連を調べました。分析にあたって、年齢、性別、地域、総エネルギーに対する脂肪摂取量の割合、肥満度、喫煙、アルコール摂取量、身体活動量、職業、コーヒー、緑茶、総エネルギー摂取量の影響をできるだけ取り除きました。

 

植物性たんぱく質の摂取割合が多いほど死亡リスクが低い

エネルギーに対する総たんぱく質と動物性たんぱく質の摂取割合は、死亡との明らかな関連は見られませんでしたが、エネルギーに対する植物性たんぱく質の割合が多いほど、死亡全体のリスクの低下がみられました。死因別に検討したところ、植物性たんぱく質の割合が高い人ほど循環器疾患死亡、心疾患死亡、脳血管疾患死亡のリスクが低いことが分かりました。(図1)。

 

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図1 総エネルギーに対する植物性たんぱく質摂取の割合と総死亡、死因別死亡との関連

 

総エネルギーに対する3%の赤肉・加工肉からのたんぱく質を植物性たんぱく質に置き換えると総死亡、がん死亡、循環器死亡リスクが下がる。

統計学的に、同じエネルギー摂取量において、総エネルギーに対する3%の赤肉・加工肉からのたんぱく質を、植物性たんぱく質に置き換えた場合のリスクを計算したところ、赤肉を植物性たんぱく質に置き換えた場合は、総死亡リスクが34%、がん死亡リスクが39%、循環器死亡リスクが42%下がることがわかりました。加工肉を植物性たんぱく質に置き換えた場合は、総死亡が46%、がん死亡リスクが50%下がることがわかりました。(図2)
また、赤肉を魚介類からのたんぱく質で置き換えても、総死亡リスクが25%、がん死亡リスクが33%、循環器死亡リスクが33%下がることもわかりました。(図なし)

 

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図2 総エネルギーに対する3%の動物性たんぱく質を植物性たんぱく質に置き換えた場合の死亡リスク

 

今回の研究からみえてきたこと

今回の研究で、エネルギー摂取量に対する植物性たんぱく質摂取量の割合が多いほど、死亡リスク、特に循環器疾患死亡リスクが低いことが明らかとなりました。植物性たんぱく質は、血圧・体重・血中脂質・インスリン抵抗性などに良い効果を及ぼすことが多くの研究から報告されています。 一方、米国の研究では、動物性たんぱく質の割合が多いと死亡リスクがあがるとの報告もありますが、今回の研究では、動物性たんぱく質と死亡との関連は見られませんでした。これは、米国と比較して日本では、エネルギー摂取量に対する動物性たんぱく質摂取量の割合が低いこと(米国の研究の中央値14%に対して、今回の研究は7.7%)、米国の、動物性たんぱく質の主な摂取源が異なること(欧米は、赤肉・加工肉であり、今回の研究では魚介類)などが考えられます。

今回の研究から、植物性たんぱく質の摂取量が比較的多い日本の食事が、わが国の長寿に関係しているかもしれない可能性が示されました。

今回の研究の限界として、1回のアンケート調査から計算された摂取量で計算しており、追跡中の食事の変化については考慮していないことや、統計学的に様々な要因は考慮しましたが、植物性たんぱく質は健康的な食行動を代表しているかもしれないことなどがあげられます。

 

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