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現在までの成果

海藻摂取と脳卒中・虚血性心疾患発症リスクとの関連

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・虚血性心疾患などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防や健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)に岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、平成5-6年(1993-94年)に茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古の計9保健所(呼称は2019年現在)管内にお住まいだった、40~69歳の男女のうち、循環器疾患及びがんの既往がなく、食事調査アンケートに回答した86,113人(男性40,707人、女性45,406人)の方々を約20年間追跡した調査にもとづいて、海藻摂取と脳卒中・虚血性心疾患発症リスクとの関連を調べた結果を論文発表しましたので紹介します(The American Journal of Clinical Nutrition 2019年9月13日web先行公開)。

海藻は、日本を含む東アジアでよく食べられている食品であり、食物繊維、カリウムやたんぱく質などが含まれています。これまで動物を用いた研究では、海藻の成分が血圧を低下させることや、血清脂質を改善させることなどが報告されています。しかし、人を対象にした研究では、海藻の摂取と脳卒中や虚血性心疾患発症との関連は明らかになっていませんでした。この研究では、海藻摂取と脳卒中及び虚血性心疾患との関連を明らかにすることを目的としました。

 

海藻の摂取頻度が多い人では、虚血性心疾患の発症リスクが低い

研究開始時の食事アンケート調査の中で、海藻の摂取頻度に関する質問項目の回答から、対象者を「ほとんど食べない」、「週に1~2日」、「週に3~4日」、「ほとんど毎日食べる」の4つのグループに分け、その後の脳卒中および虚血性心疾患発症との関連を男女別に検討しました。約20年間の追跡期間中に、4,777人が脳卒中を発症し、1,204人が虚血性心疾患を発症しました。海藻を「ほとんど食べない」グループと比較して、海藻を「ほとんど毎日食べる」グループの虚血性心疾患の発症リスクは、男性で24%、女性で44%低いことが明らかになりました(図)。しかし、脳卒中(脳梗塞、脳出血およびクモ膜下出血)については、海藻摂取との関連は見られませんでした。

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この研究結果について

本研究は、海藻摂取が男女の虚血性心疾患の発症リスク低下と関連することを示した、世界で初めての報告です。これまでに、女性において海藻摂取と脳卒中の死亡リスクの低下との関連が報告されていましたが、循環器疾患の発症との関連を、年齢や海藻以外の食品の摂取頻度、生活習慣を調整して検討した報告は、本研究が初めてです。

海藻の摂取が虚血性心疾患発症リスクの低下と関連した理由として、海藻に含まれる食物繊維による血清脂質の改善や、たんぱく質による血圧降下作用などが考えられます。

海藻を摂取する人は、健康な食事パターンであることが考えられることから、過去に多目的コホート研究(JPHC研究)で報告されている健康な食事パターンの食品要素である、野菜、果物、大豆製品、魚類、緑茶を統計学的に調整しても、結果は変わりませんでした。すなわち、海藻摂取は健康な食事パターンとは関係なく、虚血性心疾患発症リスクの低下と関連する可能性が示されました。

海藻は、欧米ではなじみの薄い食品ですが、近年では、移住などによる民族の多様化により、食文化の多様性も広がってきていることから、今後は国内外において、海藻が疾患予防に役立つ可能性が考えられます。しかしながら、海藻と疾患リスクに関する疫学研究はまだ少なく、海藻の健康全体に対する影響についての研究成果を蓄積していく必要があります。

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