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現在までの成果

肉・魚摂取と胆道がん罹患との関連

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)と平成5年(1993)年に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の10保健所管内(呼称は2019年現在)にお住まいだった、40~69歳の方々のうち、研究開始から5年後のアンケートに回答した男女約9万2千人を平成24年(2012年)まで追跡した調査結果にもとづいて、肉・魚の摂取と胆道がんの罹患との関連を調べた結果を専門誌で論文発表しましたので紹介します(Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention 2019年10月WEB先行公開)。

 

赤肉の摂取は、世界がん研究基金(WCRF)と米国がん研究協会(AICR)により、大腸がんのリスクを上げることが「おそらく確実(Probable)」と評価されており、そのほかのいくつかのがんのリスクを上げる可能性が示唆されています。また、魚類の摂取は、いくつかのがんに対して予防的に作用する可能性が示唆されています。一方で、これら肉類・魚類の摂取と胆道がん(胆嚢がん・肝外胆管がん)の関連を調べた研究は限られており、それらの研究から得られた結果も一貫していません。そこで、私たちは多目的コホート研究にて、肉類・魚類と胆道がん罹患の関連を調べました。 2012年までの追跡期間中に、男性約4万3千人のうち217人が胆道がんに罹患し、女性約4万9千人のうち162人が胆道がんに罹患しました。研究開始から5年後に行なったアンケート調査の結果を用いて、肉類・魚類の摂取量によって4つまたは3つのグループに分け、最も少ないグループと比較して、その他のグループでがんのリスクが何倍になるかを調べました。解析にあたっては、性別、年齢、地域、BMI、喫煙、飲酒、胆石症の既往、糖尿病の既往、慢性肝炎・肝硬変の既往、身体活動量、魚摂取量(肉摂取の解析の場合のみ)、肉摂取量(魚摂取の解析の場合のみ)、緑茶摂取量のグループによる違いが結果に影響しないように統計学的に調整しました。

 

肉類、特に赤肉の摂取量が多い男性で、胆道がんのリスクが低い傾向が見られた

解析の結果、肉類の摂取量が多い男性において、統計学的有意に胆道がんのリスクが低いことが示されました(図1)。肉類を鶏肉と赤肉に分けて解析をしたところ、胆道がんリスクの低下は、鶏肉摂取との関連はみられませんでしたが、赤肉摂取が多いほどリスク低下と関連していました(図1)。魚類の摂取は、胆道がんリスクとは関連が見られませんでした(図1)。胆道がんを、胆嚢がんと肝外胆管がんのサブタイプに分類して肉類・魚類摂取との関連を解析したところ、肉類摂取が多い男性において肝外胆管がんのリスクが低い傾向が見られましたが、統計学的に有意なリスク低下ではありませんでした(図2)。
女性においては、肉類摂取および魚類摂取と胆道がんのリスクとの関連は認められませんでした。

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この研究について

今回の研究において、男性では、肉類(特に赤肉)の摂取量が多いグループにおいて胆道がんのリスク低下がみられました。なぜこのような結果が得られたか、はっきりとしたメカニズムはわかりませんが、肉類に含まれる単価不飽和脂肪酸などの栄養素が胆道がんに対して予防的に作用した可能性が考えられます。また、肉類の摂取量が多いグループにおいて、糖尿病や肝疾患が少ないといった、より健康状態の良い方が多かったことや、教育歴が長く専門職が多いといった社会経済状態の良好な方が多かったために、統計学的には補正しましたが、このような要因によって胆道がんリスクの低下がみられた可能性なども考えられます。

なお、本研究は過去の研究と比較して大規模な研究ですが、それでも胆道がんは罹患率が低いがんであるため、統計学的な検出力は限られており、また、胆道がんのサブタイプ(胆嚢がん・肝外胆管がん)の解析では統計学的に有意な低下の傾向はみられなかったことから、今回得られた結果も偶然の可能性は否定できません。胆道がんと肉類摂取の関連については、過去の疫学研究も含めて一貫しない結果が報告されており、また研究の数自体も限られていることから、今回の結果を確認するためには今後のさらなる研究が必要です。

 

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