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現在までの成果

がん家族歴と、その後のがん罹患リスクとの関連について

 ―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立つような研究を行っています。平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古、大阪府吹田の10保健所管内(呼称は2019年現在)にお住まいだった方々のうち、研究開始時のアンケートにご回答下さった40~69歳の男女約10万3千人の方々を、平成24年(2012年)まで追跡した結果に基づいて、がん家族歴とがん罹患リスクとの関連を調べた結果を専門誌で論文発表しましたので紹介します(International Journal of Cancer. 2019年10月web先行公開)。

がん家族歴(ここでは、第一親等:親、兄弟が、何らかの部位のがんになったことがある)がある人は、様々ながんのリスクになることが知られており、その理由として同じ生活環境を共有することによる環境的側面と、遺伝的側面が影響していると考えられています。がん家族歴とがん罹患リスクとの関連について、これまで部位別のがんに限った疫学研究は多数報告されていますが、前向き研究で様々な部位のがん罹患リスクを同時に検討した報告はありませんでした。そこで、私たちは、日本人を対象とした多目的コホート研究において、がん家族歴と、その後のがん罹患リスクとの関連をがんの部位別に検討しました。

 

研究方法について

調査開始時のアンケートに回答し、がん既往歴のない103,707人を対象に2012年末まで追跡調査を行いました。対象者をアンケート調査結果からがん家族歴の有無(有りは、実父、実母、兄弟、姉妹に少なくとも1人が、がんになったことがある)で2つのグループに分け、がん家族歴が無いグループに比べて、がん家族歴の有るグループのがん罹患リスクが何倍になるのかを調べました。部位別の検討では、各部位のがん家族歴の有無と、各部位のがん罹患リスクとの関連を調べました。

 

がん家族歴は、全部位、食道、胃、肝臓、膵臓、肺、子宮、膀胱のがん罹患リスク上昇と関連

年齢や地域、喫煙、飲酒など他の条件が結果に影響しないように考慮して解析したところ、がん家族歴の無いグループ比べて、がん家族歴の有るグループでは全部位、食道、胃、肝臓、膵臓、肺、子宮、膀胱のがん罹患リスクの上昇がみられました(図1)。

 

図1 がん家族歴と、その後のがん罹患リスクとの関連

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赤字は統計学的有意にリスクが上昇。

年齢、性別、地域、BMI、喫煙、飲酒、身体活動、糖尿病歴、健診受診歴、月経状況(乳がん、子宮がん)、ホルモン剤の使用(乳がん、子宮がん)を統計学的に調整

 

喫煙の有無で分けても、がん家族歴はがん罹患リスク上昇と関連

喫煙の影響をとりのぞくために、本人の喫煙の有無で分けて解析を行いました。図1で、がん家族歴によるリスクの上昇がみられたがんの部位において、本人の喫煙の有無にかかわらず各部位のがん罹患リスクが上昇する傾向がみられました。そのほか、本人の飲酒・体格でわけて解析しても同様の結果がみられました。一方、膵臓がんでは、非喫煙者において、膵臓がん家族歴が、より強いリスクの上昇がみられました(図2)。

 

図2 本人の喫煙の有無で分けたがん家族歴と、その後のがん罹患リスクとの関連

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赤字は統計学的有意にリスクが上昇。

年齢、性別、地域、BMI、飲酒、身体活動、糖尿病歴、健診受診歴、月経状況(乳がん、子宮がん)、ホルモン剤の使用(乳がん、子宮がん)を統計学的に調整

 

がん家族歴と、その後のがん罹患リスクの上昇について

これまでの研究結果と私たちの結果を比べると、がんの家族歴があることは、環境や遺伝要因を共通にもっているために、がん罹患のリスクがあがるという、ほぼ同じ研究結果が見られています。今回の研究において、先行研究で多く報告されている大腸がんの家族歴とがん罹患の関連がみられなかった理由は、今回調整しきれていない、赤肉/加工肉摂取など、他の様々な生活習慣や、遺伝的要因が関与しているのではないかと考えられました。

また、非喫煙者でのみ、膵臓がん家族歴のある人で膵臓がん罹患リスクの上昇がみられました。この理由として、喫煙の影響よりも、家族性膵臓がん(親子、または、兄弟姉妹に二人以上の膵臓がん患者様がいる家系)の影響が強いことを反映しているのかもしれません。

 

今回の研究について

今回の研究は、がん家族歴とその後のがん罹患との関連を様々な部位で検討した初めてのコホート研究です。今回の結果で、がん家族歴は、様々ながん罹患リスクの上昇と関連することが分かりました。従って、がん家族歴を聴取することは、がんになりやすい人を見つけられるかもしれない重要な情報になる可能性が示唆されました。

また、今回は、本人の喫煙・飲酒・体格に関わらず、がん家族歴がリスクとなっていましたが、発がんには様々な要因が関連するので、がん家族歴がある方については、がん予防のためにリスクとなる生活習慣をさけること(日本人のためのがん予防法)、推奨されているがん検診を受けることがすすめられます。予防が難しいがんや、がん検診では発見されにくいがんについては、早期発見のための新たな知見の蓄積が待たれます。

一方で、今回の研究では、家族歴をアンケートで聞いているため、本当にご家族ががんであったかを確認はしていないという研究の限界もあります。また、今回は症例数の多かったがんの部位の検討しかできませんでしたので、罹患者数の少ない他の部位においても研究が必要と思われます。

 

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