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現在までの成果

肥満関連遺伝子FTOに見られる遺伝子多型と大腸がん罹患リスクとの関連について

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞・糖尿病などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古の9保健所管内(呼称は2020年現在)にお住まいだった方々を対象に、肥満関連遺伝子FTOに見られる遺伝子多型と大腸がん罹患リスクとの関連について調べた結果を専門誌で論文発表しましたので紹介します。(PLoS One. 2020 Feb 13;15(2):e0229005.)

今回の研究では、近年のゲノム網羅的な関連解析によって同定された肥満関連遺伝子FTOに見られる7つの遺伝子多型(rs1421085, rs1558902, rs1121980, rs8050136, rs3751812, rs9939609, rs9941349)に着目し、肥満関連がんの一つである大腸がんとの関係を調べました。また、7つの遺伝子多型のうち、rs8050136多型によって、脂肪細胞由来ホルモンであるレプチンやアディポネクチンが異なった働きをするという基礎的研究の報告をもとに、血中のレプチンおよびアディポネクチン濃度と大腸がんとの関係がrs8050136多型によって異なっているかを調べました。

 

保存血液を用いた、コホート内症例対照研究について

今回の研究では、保存血液を用いて遺伝子解析や血漿分析を行うため、コホート内症例対照研究を行いました。具体的には、多目的コホート研究開始時のアンケートに回答し、研究のために血液を提供して下さった約3万8千人の方々の中から、2003年末までの追跡期間中に大腸がんと診断された人を症例とし、症例1名に対し性、年齢等がマッチする対照2名を選択しました。今回は症例375名と対照750名を分析の対象としました。

 

肥満関連遺伝子FTOに見られる遺伝子多型は大腸がん罹患リスクに影響する

今回の研究対象とした遺伝子多型のうちrs1121980を除く6つは、大腸がんと統計学的有意に関連していました(P <0.05)。統計学的有意ではなかったものの、rs1121980もほぼ同様の結果でした(P =0.06)。日本人では頻度の低いタイプの遺伝子多型(rs8050136多型であればCA+AA型)を持つ人で、大腸がんの罹患リスクが上昇していました。図1には、rs8050136の結果を示しています。

図1.肥満関連遺伝子FTOのrs8050136多型と大腸がんとの関連

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肥満関連遺伝子FTOのrs8050136多型がCAまたはAA型で、血中アディポネクチン濃度が低い人において大腸がんの罹患リスクがより上昇

今回の研究では、血中のレプチンおよびアディポネクチン濃度と大腸がんとの間に統計学的有意な関連は見られませんでした(図2)。ただし、同じように血中アディポネクチンが低濃度の人でも、肥満関連遺伝子FTOのrs8050136多型がCAまたはAA型の人では、CC型の人に比べて大腸がんの罹患リスクがより上昇していることが観察されました(図3・左)。

図2.血中のレプチン濃度(左)およびアディポネクチン濃度(右)と大腸がんとの関連

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図3.肥満関連遺伝子FTOのrs8050136多型で層別化された血中のレプチン濃度(左)
およびアディポネクチン濃度(右)と大腸がんとの関連

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この研究について

今回の研究から、肥満関連遺伝子FTOに見られる幾つかの遺伝子多型が大腸がん罹患リスクと関連している可能性が示唆されました。肥満関連遺伝子FTOのrs8050136多型がCAまたはAA型の人では、FTOの発現量が低下することによって細胞増殖を抑制する作用があると言われているアディポネクチンの働きがより低下する可能性があります。そのために、アディポネクチンの血中濃度が最も低値な人たちの間で大腸がんの罹患リスクがより上昇していたのかもしれません。今回の研究は、基礎的研究の報告をもとにした仮説を検証する探索的要素が強いため、今回の結果が他の研究で再現されることが望まれます。

研究用にご提供いただいた血液を用いた研究の実施にあたっては、具体的な研究計画を国立がん研究センターの倫理審査委員会に提出し、ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針について審査を受けてから開始します。今回の研究もこの手順を踏んだ後に実施いたしました。国立がん研究センターにおける研究倫理審査については、公式ホームページをご参照ください。多目的コホート研究では、ホームページに多層的オミックス技術を用いる研究計画のご案内や遺伝情報に関する詳細も掲載しています。

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