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現在までの成果

非喫煙女性の受動喫煙と糖尿病発症との関連

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣と、がん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成2年(1990年)と平成5年(1993年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古の9保健所(呼称は2020年現在)管内にお住まいだった、40~69歳のたばこを吸わない女性約2万5千人の方々を対象に、同居する配偶者の喫煙状況や、職場など家庭以外の場所での受動喫煙とその後の糖尿病発症との関連を分析して、専門誌で論文発表しましたので紹介します(Journal of Diabetes Investigation 2020年3月WEB先行公開)。

夫が喫煙者である女性は、自分に喫煙をする習慣がなくても、家庭で受動喫煙の影響を受けていることが考えられます。また、受動喫煙は、職場など家庭以外の場所でも起きていると考えられます。これまでの先行研究では、喫煙が糖尿病のリスクを上昇させることは既に報告されておりますが、受動喫煙においては、はっきりとは分かっていません。そこで、本研究では、夫の喫煙状況や職場などの家庭以外の受動喫煙の状況を詳細に調べ、その後の糖尿病の発症に影響を及ぼすかどうかについて検討しました。

研究開始時及び研究開始から5年後に行ったアンケート調査で、これまでにたばこを吸ったことが無い女性をこの研究の対象としました。夫の喫煙習慣の有無は、夫自身のアンケート回答結果から把握しました。女性の職場など家庭以外の場所での受動喫煙は、研究開始時に行った女性へのアンケート調査で把握しました。糖尿病の発症は、研究開始から5年後と10年後に行ったアンケート調査で、糖尿病と診断されたことがある場合としました。分析の際には地域、年齢、追跡の期間、肥満度、高血圧、親の糖尿病歴、余暇の身体活動、コーヒー及びアルコール摂取の各要因を統計学的に調整し、これらの影響をできるだけ取り除きました。

 

非喫煙女性では、夫の喫煙本数が多いほど糖尿病のリスクが上昇

研究開始から5年間で、たばこを吸わない女性のうち、334名が糖尿病を発症し、続く5年間で374名の女性が糖尿病を発症しました。夫が吸う1日あたりのたばこの本数が多いほど、女性の糖尿病発症のリスクは高くなる傾向がみられました(図1)。

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地域、年齢、追跡の期間、肥満度、高血圧、親の糖尿病歴、余暇の身体活動、コーヒー及びアルコール摂取を統計学的に調整した。

 

職場などで受動喫煙が毎日ある女性では、糖尿病発症リスクの上昇が示唆される

たばこを吸わない女性のうち、仕事をしている女性に限定した分析を行いました。職場など家庭以外の場所で受動喫煙が無いと答えた女性に比べて、毎日あると答えた女性は、糖尿病発症のリスクが1.23倍高いことがわかりました(図2)。しかしながら、このリスクの上昇は、統計学的に有意なものではありませんでした。

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地域、年齢、追跡の期間、肥満度、高血圧、親の糖尿病歴、余暇の身体活動、コーヒー及びアルコール摂取を統計学的に調整した。

 

今回の研究は女性を対象に、本人にたばこを吸う習慣がなくても、夫が吸っているたばこの本数が多いと、その後の糖尿病のリスクが上昇するという傾向がみられました。また、職場など家庭以外の場所で、受動喫煙による糖尿病リスクへの影響も示唆されました。はっきりとしたメカニズムはわかっていませんが、これまで様々な研究から、能動喫煙によりインスリン抵抗性や血糖の上昇が誘導されることがわかっており、受動喫煙でも同じことが起きていると考えられます。

わが国では男性の喫煙率が女性よりも高く、たばこを吸わない女性であっても、家庭で配偶者から受動喫煙の影響をうけている場合があることが考えられます。家族の健康を守るためにも、ヘビースモーカーの男性は、まず毎日吸うたばこの本数を減らし、その後の禁煙へつなげることが望まれます。

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