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現在までの成果

フラボノイドの豊富な果物の摂取と虚血性心疾患の発症リスクとの関連

―多目的コホート研究(JPHC研究)からの成果報告―

 

私たちは、いろいろな生活習慣とがん・脳卒中・循環器疾患などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防や健康寿命の延伸に役立てるための研究を行っています。平成7年(1995年)に岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県中部、平成10年(1998年)に茨城県水戸、新潟県長岡、高知県中央東、長崎県上五島、沖縄県宮古の計9保健所(呼称は2019年現在)管内にお住まいだった45~75歳の男女のうち、循環器疾患及びがんの既往がなく、食事調査アンケートに回答した87,177人(男性39,840人、女性47,337人)の方々を平均約13.2年間追跡した調査にもとづいて、フラボノイドの豊富な果物の摂取と虚血性心疾患の発症リスクとの関連を調べた結果を論文発表しましたので紹介します(Br J Nutr. 2020年6月ウェブ先行公開)。

フラボノイドは、果実、お茶、チョコレート、ナッツや赤ワインなどに多く含まれるポリフェノールの一種です。これまで動物を用いた研究では、フラボノイドやフラボノイドの豊富な果物が血管内皮を保護することや、血清脂質を改善させることなどが報告されています。欧米の疫学研究では、フラボノイドの豊富な果物の摂取が虚血性心疾患の発症リスクの低下と関連するという報告はありますが、アジア人においてフラボノイドの豊富な果物の摂取と虚血性心疾患の発症リスクとの関連は明らかではありませんでした。そこで、本研究では、フラボノイドの豊富な果物と虚血性心疾患発症リスクとの関連を明らかにすることを目的としました。

今回の研究では、フラボノイドの量が100g当たり50 mg以上の果物をフラボノイドの豊富な果物と定義し、この中には、りんご、なし、柑橘類(みかん、その他の柑橘類)、いちご、ぶとうが含まれます。食事調査アンケートの摂取頻度と、1回に摂取する量から1日当たりのフラボノイドの豊富な果物と、その個々の果物の摂取量をそれぞれ算出し、摂取量を5つのグループに分け、摂取量が最も少ないグループを基準として、その他のグループのその後の虚血性心疾患の発症リスクを検討しました。

 

フラボノイドの豊富な果物、特に柑橘類の摂取量が多いグループでは、虚血性心疾患の発症リスクが低かった

約13.2年間の追跡期間中に、1,156人が虚血性心疾患を発症しました。フラボノイドの豊富な果物の摂取量が最も少ないグループと比べ、摂取量が最も多いグループでは、虚血心疾患の発症リスクが0.78(95%信頼区間:0.62-0.99)と低下しており、摂取量が多いほど発症リスクが低かったことが分かりました(図1)。個別の果物では、柑橘類において、摂取量が最も少ないグループと比べ、最も多いグループの虚血性心疾患の発症リスクが低かったことが分かりました。一方、りんご、なし、いちご、ぶどうの摂取量と虚血性心疾患の発症リスクとの統計学的に有意な関連は見られませんでした。

また男女別に分けて解析を行ったところ、女性では、フラボノイドの豊富な果物の摂取量が最も少ないグループと比べ、最も多いグループでは、虚血性心疾患の発症リスクが低かったことがわかりましたが、男性では関連がみられませんでした。

 

図1.フラボノイドの豊富な果物の摂取量と虚血性心疾患発症との関連

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この研究結果について

本研究では、フラボノイドの豊富な果物の摂取量が多いほど、特に柑橘類において、虚血性心疾患の発症リスクが低かったことが分かりました。この理由として、フラボノイドやビタミンCによる抗酸化作用が、動脈硬化の抑制、および炎症を抑えることなどにより、虚血性心疾患の発症リスクを予防したことが考えられます。海外で行われたメタアナリシス研究では、りんごの摂取と虚血性心疾患とのリスク低下について報告されていますが、フラボノイドはりんごの皮に多く含まれており、日本ではりんごの皮をむいて食べることから、今回の結果では関連がみられなったことが考えられます。柑橘類と虚血性心疾患の発症リスク低下との関連については、先行研究と同様の結果でした。また、男性でこの関連がみられなかった理由として、喫煙などの影響により、フラボノイドの豊富な果物の潜在的な保護効果が減衰した可能性が考えられます。

今回の研究の限界点として、1回の食事調査アンケートから摂取量を算出しており、追跡中の摂取量の変化について考慮できていないことなどが挙げられます。また、フラボノイドの豊富な果物の摂取と虚血性心疾患の発症リスクに関する疫学研究はまだ少なく、今後もさらなる研究が求められます。

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